今の状況から変わりたい
普通の子として頑張ってきた。
「衣食住もあり、学費やお金も出してもらっていました。その私がネグレクトされて、虐待ですか?」と問うネコゼさんに、精神科医は「これだけ放置していればネグレクトになる」「兄弟姉妹間で虐待はある」と返す。
ネコゼさんは戸惑いつつも、「今の状況から変わりたい」とADHDの薬物治療や特性上の困りごとへの対策を始める。
それから約5年。ほんの少しずつではあるが、ADHDの困りごとが減ってきていると実感している。
ネコゼさんは子どものころから、物語を考えたりイラストを描いたりすることが大好きだった。
オフ会で出会った男性と付き合うようになり、結婚した。心のよりどころにもなった。
同じ趣味を持つ学生時代からの友人との交流を通して、「障害があってもなくても、私は私」と前向きな気持ちを持てるようになった。
夫とはいまは別居の形をとっているが、小説の執筆など好きなことに取り組み、幸せを感じる時間は少しずつ増えている。
頑張った自分を大切にして
もちろん、「もし両親が私の発達障害に気づいてくれていたら」と思うこともあった。
「ADHDと診断されて、母親に伝えたんです。『私、生まれつき発達障害を抱えているんだよ』と。でも母親の態度は何も変わらなかった。この人たちは昔からずっとこうで、変わらない。そう、気持ちの整理をつけられたんです」
居場所はこの家にはない。でもそれでいい。この人たちに好かれる必要はない。
困った時に寄り添って悩みを聞いてくれる友達がいる。自分を大切にしてくれる人たちとの時間を大切に生きていこう。
ネコゼさんの葛藤が描かれたコミックエッセー『家族から放置されて発達障害に気づかれないまま大人になりました』の最後は、ネコゼさんが家を出て行くシーンで締めくくられる。
ネコゼさんはこう話す。
「いろんな生きづらさを抱えている人の中には、私と似たような経験を持つ人もいると思います。しかしそこにとらわれて苦しむより、視点を変えて、つらかったことの中にも楽しかったこと、うれしかったことに目を向けて、頑張ってきた自分自身を大切にしてほしい」
発達障害の当事者だけに限らず、すべての人が受け止めたい言葉だ。
(構成・ライター 羽根田真智)
<ISBN入れる>
『家族から放置されて発達障害に気づかないまま大人になりました』(漫画・モンズースー、原作・ネコゼ/KADOKAWA)