AERA 2025年1月20日号より

 会社のアドバイスで、発達障害についての講演活動、YouTubeでの発信をしている。つらかった過去を、いま悩んでいる人に伝えている。

「20年前と比べて、発達障害の認知度は上がっていると感じます。しかし、『アスペ』『ガイジ』と侮蔑的に言われる課題もあります。発達障害というカテゴリー分けは、発達障害のある人を排除するためでなく、配慮のためのものであるとわかってほしいです」

会社側が一緒に考えて

 発達障害とは、生まれつき脳の働きに偏りがあり、日常生活に困難が生じている状態を言う。主に、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症(ADHD)、学習障害(LD)の3種類がある。特性はさまざまだが、例えば周囲の音が混じると会話が聞き取れない、開放的なオフィスでは集中できない、予定外のタスクにパニックになってしまう……などの特性から、働きづらさを感じ、仕事が続かない人は少なくない。

 ここ数年、脳機能の発達に優劣をつけず、違いを尊重する概念「ニューロダイバーシティ」が日本でも徐々に広がってきた。先行研究では、「細部への注意力が高く、情報処理能力が高い」(ASD)、「リスクを取り、新たな領域へと挑戦することを好む」(ADHD)など、発達障害の特性が働く上で強みになる可能性も多く示されている。働くために支障になっている「壁」は何か、会社側が一緒に考えて、環境や仕組みを整えることで、自身の強みを生かし、欠かせない戦力になることは可能だ。

 そもそも発達障害は「日常生活に困難が生じている状態」。企業や社会の側が変わり、困り感がなくなれば発達障害は「障害」ではなくなる。(編集部・井上有紀子)

AERA 2025年1月20日号より抜粋、加筆

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