2019年、平成最後の新年祝賀の儀に参列する皇太子妃時代の雅子さま、紀子さまと眞子さん、佳子さまら女性皇族方。雅子さまの「皇太子妃のティアラ」は、アール・デコ調のデザインでひときわ大きく重厚感がある。秋篠宮家の3方の「百合」を意匠としたティアラはふんわりと優美な曲線を描き、透かし彫りをはじめとする細工は地金の重量を減らしご負担を軽減する目的もある=2019年元日、皇居・宮殿「松の間」

 ティアラを着ける場面は、皇居・宮殿での行事や両陛下主催の晩餐会など、さまざまだ。皇居だけではなく、訪問する国での歓迎晩餐会や王族の結婚式で着用することもある。

 あらゆるシチュエーションでの使用を想定し、どのような髪型やシチュエーションにあっても女性皇族の頭にぴったりとはまり、疲れさせず、そして女性皇族を美しく輝かせる宝冠でなければならない。

 ひとつひとつの宝石が大きく、金属部分も重厚感のある外国のティアラに比べて、日本の職人の手によるティアラは、日本の自然美を表現したような繊細なデザインと細工に定評があると、大倉さんは話す。

「欧州のティアラは、とくに横から見たときに、宝冠の土台からトップまでを直線で美しさを体現したデザインが多い。一方で、特にわれわれの工房では、宝冠の土台から上にかけて、ふんわりと弧を描くような優美さを意識して作ります」

元日の新年祝賀の儀に正装で臨む愛子さまら皇族方。承子さまは「フェニックス(不死鳥)」、瑶子さまは、「星」をモチーフにしたティアラを製作された=2024年、元日、皇居・宮殿
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