内閣府に設置されている「公益認定等委員会」から10月に日本PTA全国協議会に届いた報告要求の書類。「経理処理・財産管理等に関して不適切な状況が確認」とし、具体的かつ詳細に説明を求めている(撮影/写真映像部・山本二葉)
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「AERA dot.」に最近掲載された記事のなかで、特に読まれたものを「見逃し配信」としてお届けします(この記事は12月5日に「AERA dot.」に掲載されたものの再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。

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 各地で進むPTA改革のうねりのなか、市や県のPTA組織が相次いで「日P」から脱退している。PTA組織のピラミッドに、何が起きているのか。AERA 2024年12月9日号より。
 

 全国のPTAや、市区町村や都道府県のPTA連合会や協議会を束ねる日本PTA全国協議会、略して日P。全国規模の研究大会の開催、文部科学省の意向に沿う要望提出などを行ってきたが、その日Pにいま、大きな綻(ほころ)びが生じている。

 10年ほど前からPTAを取材してきた筆者が空気の変化を感じたのは2022年だ。それ以前にも、日Pの運営や全国大会の在り方に対する疑問や不満の声は取材中よく耳にしたが、表立った動きは見られなかった。

 だが同年春、京都市PTA連絡協議会(以下、京都市P)会長だった大森勢津氏が日Pからの退会提案や、質問状の公開を行い、大きな波紋を呼ぶ。京都市教育委員会の介入により退会に至らなかったが、22年度末には東京都小学校PTA協議会(現・東京都PTA協議会)が、23年度末~24年には千葉市とさいたま市の団体が日Pを退会している。退会ばかりではない。岡山県PTA連合会は24年度末で「解散」することを発表。都道府県レベルのPTA組織解散は全国で初めてだ。

 下部組織が次々に離反している背景には、日Pのずさんで不透明な運営がある。

 23年春には、22年度の会計における約5千万円の赤字が発覚。当時会長だった金田淳氏が総会で「原因を徹底解明する」と宣言したところ、翌月の理事会で突如、「パワハラ」を理由に解職される事態が起きた。金田氏はこれを事実無根として、名誉毀損(きそん)の訴訟を起こしている。

内閣府から報告要求

 そして24年6~7月には日Pの元参与の青羽章仁被告が業務上横領と背任の容疑で逮捕された。青羽被告は22年度に発注した「日P会館」の修繕工事の際、自身が利益を得るため工務店に代金を水増し請求させ、日Pに約1200万円の損害を与えたなどとされる。不正な会計処理が疑われて出入りを禁止された同被告を事務局に立ち入らせていた事務局長と次長の2人も懲戒解雇されるに至り、以来現在まで日Pでは事務局長不在の状態が続いている。

 さらに10月には内閣府が日Pに対し、公益法人として適切な運営が行われていない疑いがあるとして、業務の実態や修繕工事の発注に関する事実関係、理事の認識、再発防止策等を報告するよう求めた。日Pによると、報告書はすでに提出済みだが、公開予定はなく、会員である各協議会・連合会への報告について検討している段階だという。

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