Matthew Chozick/ライター、大学講師、日本文学研究など。「世界まる見え!テレビ特捜部」(日本テレビ)に出演。エッセイ集に『マシューの見てきた世界』(Pヴァイン)(撮影/高橋奈緒)
Matthew Chozick/ライター、大学講師、日本文学研究など。「世界まる見え!テレビ特捜部」(日本テレビ)に出演。エッセイ集に『マシューの見てきた世界』(Pヴァイン)(撮影/高橋奈緒)
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 村上春樹さんの作品は日本だけでなく、世界でも多くの人に読まれている。外国人から見た村上作品の魅力は何か。日本文学を研究するマシュー・チョジックさんが語った。AERA 2023年4月17日号の記事を紹介する。

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 僕がまだアメリカのコネティカット州に住んでいたティーンエイジャーの頃、たまたま本屋で『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の英訳版を見つけました。ムラカミのことは気になっていたので、即買いして読んでみたら、見事にハマっちゃいましたね。

 一角獣が生息する壁に囲まれた街で、「僕」が一角獣の頭骨から古い夢を読み解く……。「なにこれ、すごい!」。思いもよらない展開は実験的で、アバンギャルドで、文章を読んでいるというよりは何かサイケデリックな夢を見ているような感じ。本の虫で文学少年だった僕が味わう初めての感覚でした。今でも一番好きな作品かな。それから夢中になって、村上春樹の作品はほぼ読破したと思います。

 彼の文章はすごくポストモダンですが、外国人の僕ですら原文でスラスラ読めるくらいやさしい。それでいて哲学的、エンターテインメント性もある。普通は共存できないニュアンスがちりばめられている。これは技術なのかムラカミの魔法なのか、僕には分からない(笑)。シェークスピアと紫式部とスティーブン・キングを足しても、彼には及ばないと思う。たとえばが急に人間の言葉をしゃべり出すような、現実と非現実が入り交じる「マジカルリアリズム」という実験的手法を彼はよく使いますが、これは中南米の作品に多く、アメリカやアジア文学ではあまり見られません。

 最近では、作品に登場する女性の描き方について海外でも批判される向きがありますが、日本人作家では一番人気です。彼の作品に登場する作家や音楽などの文化的コンテクストには、フィッツジェラルドやビートルズといった海外のものが多いので、海外の人もとっつきやすいのでしょうね。

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