『人間関係の悩みがなくなる 期待しない習慣』(朝日新聞出版)
林健太郎『人間関係の悩みがなくなる 期待しない習慣』(朝日新聞出版)>>書籍の詳細はこちら

「期待をしない」で生きることは不可能である

 では期待さえしなければ、裏切られることもイライラすることもなくなるのか、と考えた皆さん。私の最新作のタイトルは『期待しない習慣』です。

 そう、「習慣」なんです。「期待をするな!」と厳しく思考を律することが目的の本ではありません。結論から言えば、修行を積んだ高僧でもないかぎり、どんなに練習して習慣づけようが、「全く期待をしないで生きていくこと」は不可能なんです。

 私は「期待しないで生きていきましょう」などと訴えるつもりはありません。そうではなく、「期待しすぎない習慣」をつけることで、「期待とうまくつき合う方法」を学んでいただきたいと考えています。

 まだ私が20代のころ、仕事で中央アフリカ共和国を訪問したときのこと。空港で次の目的地であるパリに行くため、エア・アフリカを予約したのですが、出発時刻を1時間過ぎても、2時間過ぎてもやってきません。

 飛行機が説明もなく時刻通りに来ないなんて日本では考えられないことです。間違いなく、搭乗手続きのカウンターにお客さまたちが列を成すことでしょう。しかし、このとき一緒の飛行機に乗るはずのアフリカの人たちは、怒る様子もなく、すっかり暗くなった夜空を見上げ「今日はもう来ないかな」「明日には来るだろ」とのんきなことを言いながら、次々に空港をあとにするではありませんか。

 その姿を見て、私は思いました。

「あっ、この人たちは、日本人と「期待とのつき合い方」が違うんだ」

 そもそも、交通機関が時間通りに運行されることが当たり前の日本人とは、交通機関への「期待のレベル」というか、「期待のハードルの高さ」が違っている。

 一事が万事で、おそらく彼らは、さまざまなことに対して「期待外れ」は日常的に起きることである、と考えている。だから、期待を裏切られても、すぐに気分を切り替えることができるし、がっかりもしないのだと分析しました。

 表現を変えれば、「期待との距離の置き方」がうまいのです。

「期待しないこと」は無理なことだとしても、この事例のように「期待外れ」にどう対処するかということについては、工夫のしようがあります。

 つまり、「どのようにすれば期待とうまくつき合えるだろうか?」を考えるのが生きていく知恵なのではないかと思うのです。 

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期待と仲良く生きる方法