競技を越えて、「同じ日本選手同士で、刺激しあい、励ましあい、高めあって、みんなで日本のスポーツ界を盛り上げていこう!」というチームジャパンの気運。

 同じ競技・種目内で「ふだんはライバルだけど、同じ競技・種目同士で、認め合い、高めあって、この競技・種目を日本中の人にアピールし、みんなで強くなっていこう!」という、競泳“トビウオジャパン”などの、競技団体・種目ごとのチームとしての気運。

 試合に出るのは選手一人でも、その選手とともに戦うコーチ、スタッフらが「この選手のために、心をひとつにしてそれぞれの役割の最高のことをやりきろう!」という、選手ごとのチームとしての気運。

 これらの大小、さまざまなチームが有機的に関わり合い、相乗効果を発揮して「選手は一人じゃない、みんなで強くなり、みんなで戦うのだ」と、孤独や重圧をはねのけていく。

 団体競技の「ライバルだけど、仲間」という意識は、そのまま個人競技に共有され、「表彰台、みんなで狙えば怖くない」といったポジティブなムードは、特に昨今の若い世代に、好んで受け入れられているように見受けられる。

 あるメダリストがつぶやいた言葉がある。

「今の選手たちは、“団体戦”が好きですよね。自分たちのころは、所属の違うライバルとは、ろくに話しもしなかったのに。時代が変わってきているのを感じます」

●チームビルディング効果で、代表選手数が倍増

 入江陵介選手が、銀メダルを獲得したレースの後で「競泳は27人で一つのチーム。(自分は個人のメダルをまずは獲得したが)27人のリレーはまだ終わっていない」とコメントしたロンドンオリンピック。日本代表の競泳選手たちは、種目は違えど、初日の萩野公介から最終日のメドレーリレーまで、メダルのバトンをつなぎ続けた。

 競泳に何が起こったのか。27人のチームワークとは何なのか。オリンピック後、コーチや選手らの多くがメディアに語り、ロンドン五輪競泳日本代表の共著として出版された『つながる心』(集英社)にも、選手たちの言葉でチームワークの具体的なエピソードがまとめられている。公益財団法人日本オリンピック委員会(以下、JOC)内でも、競泳のチームづくりについての情報は、様々な機会に共有され、他の競技団体も「競泳のメダル11個の勝因」として活用できるものは、どんどん取り入れていった。

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