
全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2024年12月9日号にはトゥーマーカープロダクツ 商品企画部 ゼネラルマネージャー 齊藤ひとみさんが登場した。
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世界70カ国以上で販売されている画材ブランド「コピック」のアルコールマーカー。なかでも「コピック スケッチ」は全358色という多彩さと発色、透け感が特徴で、愛用する漫画家やイラストレーターも多い。
プロ、アマ問わず支持されているマーカーだが、使いこなすにはちょっとしたテクニックが必要だ。もっと気軽に、もっと多くの人に使ってもらえるものを作りたい──。そうした思いを込めて、新しいマーカー「コピック アクレア」(全24色)を開発した。アクレアというネーミングは水性のaquaと創作のcreateから取った。
水と顔料が主な原料だが、樹脂も入っていて、乾くと耐水性になる。紙はもちろん金属や木、ガラス、布、プラスチックなどさまざまな素材に描くことができる。
「絵を描くのは苦手という人でも、ハンカチやガラスの瓶などにちょっとした模様や文字をかくだけで身近な物がオリジナルグッズになる。多くの人に手にとって楽しんでほしいです」
持ちやすいサイズと質感も特徴だが、最も力を入れたのは色味だ。何色もの絵の具やインクをパレットに並べ、混ぜながら幅広い彩りを表現していった。下地の素材に関わらず映える色や、既存のユーザーにも使いやすい色はどんな色か。ブランドらしさを踏襲しつつ、微妙なニュアンスを大切にしながら、「ちょっと個性的」を目指した。
透明感が売りの「コピック スケッチ」では出せなかった金色には、特に注力した。「金箔を貼ったように見せたくて、何度も作り直しました」。全色を並べた時の色味のバランスにも気を配った。
試作の色味を量産で完全に再現するため、製造現場に何度も足を運んだ。想像していた色と少しでも違うと、「もう少し明るく」「色の差を明確に」と細かく伝え、納得できるまでやりとりを続けた。
着想から約2年。商品化にこぎ着けたアクレアは6月の発売以来、順調に売り上げを伸ばしている。使った感想をSNSで発信してくれるユーザーも増えてきたという。
「コピックだからこの色が出せたんだね、と言ってもらえる仕上がりになりました。アクレアの色のバリエーションも増やしたいし、そのほかの新しい商品も開発していきたいです」
(ライター・浴野朝香)
※AERA 2024年12月9日号

