天羽健介・増田雅史編著『新NFTの教科書 web3時代のビジネスモデルと法律・会計・税務』(朝日新聞出版)>>書籍の詳細はこちら

 インターネットをコアテクノロジーとするこれまでのWeb2時代はGAFAM(米国のIT産業を代表するGoogle、Apple、Facebook=現meta、Amazon、Microsoftの総称)を中心とした大企業が情報やデータを独占していた社会でした。NFTが使用されるweb3が普及した社会はどのようなものかというと、その情報やデータが1人ひとりに帰属、民主化されていくというものです。

 図1のようにデジタル上のウォレットを持って、そのウォレットが自分のものだということを証明する免許証のようなIDが紐づき、そのウォレットからエンタメや金融、行政などさまざまなアプリケーションに接続するイメージです。

【図1】web3で今後予想される世界

 現在は情報を中央集権的な大きな機関や企業が管理していますが、これらを介さずに情報やデータが民主化され個々が起点となって、すべてのやり取りが完結する世界になっていきます。そして1人ひとりが所属するコミュニティも多様化が進んでいきます。

 これまでのSNSフォロワーを中心としたコミュニティ内では「いいね」や「シェア」などの承認欲求を満たす報酬がありました。web3ではこれに加えてトークンでの金銭的インセンティブが追加され、それぞれのコミュニティに貢献した人にはトークンが配られます。そしてコミュニティが盛り上がればトークンの価値は上がり、売買することで値上がり益を期待することもできます。

 このように当たり前にさまざまなトークンを保有しながら、多様なコミュ二ティで相互に交流・共創しながら生活していくことになるでしょう。この時に自分のデータを証明したり、コミュニティに入る権利としてNFTが使われたりするのです。

幻滅期を越えてNFTのマスアダプションへ

 2024年8月7日に発表されたガートナー社の「日本における未来志向型インフラ・テクノロジーのハイプ・サイクル:2024年」(図2)によれば、現在は幻滅期に入っていると予想されています。マスアダプション(社会に浸透すること)に要する年数があと2~5年といわれているなか、現在は仕込み期間中でこれから徐々に表出してくるというわけです。多くのweb3プロジェクトを見る限り、2025年あたりから大手企業の取り組みやキラーアプリと共にまた注目を浴びることになるだろうという予想です。

【図2】日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2024年
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