A社が株主に対し、さらなる株式購入を促すLINEのメッセージ

リーダーと取締役による“搾取構造”

 A社は株主たちをいくつかのグループに振り分けて管理していた。各グループには「リーダー」と呼ばれる古参の株主がおり、グループ内の株主たちと日常的にコミュニケーションを取って勧誘活動のアドバイスなどをしていたという。

 さらに各グループは取締役一人ひとりの直下に置かれ、株主が株の販売に成功すると、販売額の10%がグループリーダーに、30%が取締役に支払われる。グループリーダーと取締役が不労所得的に多額の報酬を手にする“搾取構造”ともいえるシステムになっていた。これにより、ある70代の女性リーダーは月に1000万円以上稼ぎ、社内で表彰されていたという。

 勧誘活動は、個々の株主だけでなく会社の従業員も精力的に行っていた。だがそのやり方は、だまし討ちに近いものだった。関口さんが証言する。

「私は昔、子どもたちにサッカーを教えていたのですが、会社から『シニア向けのスポーツ教室を開いてほしい』と言われました。A社は他にも、料理教室やお茶会などと称して高齢者を集める場を用意しては、全国各地で開かれる自社の健康セミナーに勧誘していたんです。社長の著書や会社案内のDVDを『本当は何万円もするけど特別に差し上げます』と言って渡し、『是非セミナーに来てください』と誘うと、一定数が義理を感じて参加してくれました」

 そのセミナーにも、人の心をつかむさまざまな仕掛けが用意されていた。中でも、登壇した社長が自身の過去と医療への思いを切々と訴えるのは恒例だった。

 心臓病を患う弟が15歳で亡くなり、娘も「3日後に死にます」と白血病を宣告されたのちに命を落とし、妻は子宮ガン、父はくも膜下出血……。家族を失う苦しい経験から、一人でも多くの命を救う決意をしたという物語を、悲しげなBGMにのせて語りかける。

次のページ “陰謀論”を信じてしまう理由