
ヨウ素水の驚きの製造現場
A社社長を「あがめ奉っていた」という真紀さんの母親は、A社の未公開株に約1500万円をつぎ込んでしまった。夫が認知症の末に亡くなり、自身も乳ガンの再発におびえていたこともあり、「このヨウ素水を飲めば認知症もガンも治る」などと口にする社長の姿に、「お父さんが生きている時に社長の話を聞きたかった」と涙していたという。
ヨウ素水を飲みはじめた母親は、「リウマチがよくなっている気がする」「よく眠れるようになった」と喜んでいた。しかし、病院での血液検査の数値に変化はなく、明け方4時にメールを送ってくる様子からして眠れているようには思えなかった。
特に真紀さんが気になったのは、ヨウ素水に成分表示がないことだった。A社の相談窓口に問い合わせると、「研究段階のものを特別に株主のみなさまにご提供しているので、表示はない。不安に思われる方は飲まなくて大丈夫です」と返ってきた。不信感を募らせた真紀さんは、A社から手を引くよう何度も母を説得したが、LINEで「バーカ!」と返ってくるなど完全に洗脳されている様子だった。

A社は、ヨウ素水をアフリカのコンゴ民主共和国で製造しているとうたっていた。しかし前出の元社員・関口さんは、社内で目撃した驚きの製造現場について明かす。
「滅菌設備も冷蔵庫もない会議室で、化学の知識があるわけでもない社員たちが作っていました。薬品を希釈したりプラスチック容器に詰めたりするのは手作業でしたが、当初はマスクや手袋、帽子の着用すら徹底されていなかった。限られた数人以外は、作業部屋に立ち入ることも中をのぞくことも厳禁だったので、社員の大半は実態を知らなかったと思います」
さらに関口さんは、ミーティングで飛び出した一人の取締役の発言に耳を疑ったという。
「『(薬は)効くと思ったら効く。これをプラシーボ効果って言うんだ、おぼえとけよ』と。そして効果があった人の感想や体験談を集めるよう指示されました」