
それから、日米同盟に関してですが、同盟関係を結んだ頃よりもアメリカが弱くなって日本が相対的に強くなっているから、その閾値(いきち)は狭まりつつある。これを、ヤクザで考えると、総本部が弱っているわけだから、直参(第1次団体)や本部への上納金や当番などが増えるのは当たり前の話です。この全体のバランスをどう見ていくかっていうことだと思うんですね。弱っているアメリカの中で、相対的に日本の貢献を求められている。他方、二国間関係の枠内だったら、日本政府の働きかけによって主権の閾値を広げることができるわけです。日本は、このゲームをトランプ氏と繰り広げないといけないのです。
それから、今後非常に気を付けないといけないのは、日英伊の次期戦闘機の共同開発でしょう。トランプ氏は知らないと思うから、これでアメリカの雇用がどれぐらい増えるんだって聞いてくると思う。日英伊の共同開発ではアメリカの雇用はゼロだから、それならアメリカの戦闘機を買ってということになってきて、全部ぶっ飛ぶかもしれない。アメリカ人が額に汗して、それで報いがあるような雇用環境を作るっていうことが彼の目指すところです。右から左に儲けるのが好きなのではなく、額に汗して勤労勤勉っていうのが好きなんですよ。
池上:本人は額に汗したことはないんだけど、額に汗して働く労働者のことは常に考えるということですね。
佐藤:額に冷や汗、全身に冷や汗をかくようなことはたくさんやっていますけどね(笑)。それと、沖縄とトランプ政権の様子も注意してみてほしいですね。沖縄の琉球新報では、トランプ氏当選で、県は共和党系人脈をてこに、共和党との関係強化を図ると報道しています。アメリカには、日本語をしゃべらずに琉球語をしゃべる沖縄系アメリカ人がたくさんいます。そうすると、アメリカと沖縄がダイレクトで交渉してまとまる可能性もある。ですから、沖縄をめぐっては、沖縄系アメリカ人の動きにも注目する必要があると思います。
(構成/編集部・三島恵美子)
※AERA 2024年11月25日号より抜粋