私もあちこちで街頭インタビューをしましたが、無視されたり、シッシッと追い払われたりと、取材拒否されることも結構あったんです。いま思い返せば、取材拒否の人々はトランプ支持者だったんだろうなということです。それが結果的に、いわゆる一般的な世論調査では表に出てこなかった、まるで接戦のように見えたということだろうと、私はそういうふうに見ています。
佐藤:今回の結果を見てほっとしたのは、これで内戦は避けられるっていうことでした。心配なのはイーロン・マスク氏です。トランプ氏はまだ予測可能ですが、マスク氏は予測がつかないし、(ウクライナの)ゼレンスキー大統領との電話会談にマスク氏も同席していたとのことで、これは公私混同政治のスタートだなと。そんなところに商売人を入れたら絶対いけないんですよ。利害関係者ですからね。
現代版の「王権神授説」
今回の米大統領選挙は、大統領を選んだと思ったら間違えるんです。「自分は選挙によって即位した王である、だから王はなんでもできる」というのがトランプ氏の認識で、近代的なシステムの国家の中の長であるという認識が極めて薄いと思います。それには暗殺未遂が大きな影響を与えていて、神から選ばれたから自分は当選したという確信を強めているので、予測がますます難しくなってきました。
池上:まるで現代版「王権神授説」ですね。それと、今回の大統領選って、ある種の階級闘争というか、信仰、プロレタリア革命みたいなところがあるような気がするんです。というのも、(米上院議員の)バーニー・サンダース氏が「労働者階級を見捨てた民主党」という言い方をしました。
一方、共和党は本来、金持ちの人たちの党でしたが、トランプ氏が低学歴の労働者層の心をつかんで、大統領になったんじゃないか──。つまり、エリートのエスタブリッシュメントに対する、プロレタリアート(労働者階級)のさまざまな執念をうまく拾い集めてトランプ氏が当選したんじゃないかと思えます。結果的にまるで階級闘争のように見えるんです。