佐藤:その見方に賛成します。例えば、トランプ氏は移民排斥ではなく不法移民の排斥を言っています。正規の手続きで入ってきてアメリカの市民社会を強化する人だったら移民は構わないんだ、と。そして、不法移民は法的保護を受けず、低賃金でこき使われて、きつい仕事、汚い仕事をやらされている、と。こうした上に民主党政権の繁栄があるということです。トランプ氏の発言を一つひとつ取ってみると、民主党支持の人も中産階級の人も、粗野だけども理屈は通っているし、価値観はしっかりしているな、と。一方で、ハリス氏からは、キリスト教的な価値観とか統一的なものを感じない、こういう感じがあったんじゃないかなと思っています。だから、逆にこのトランプ現象で今回見ないといけないのは、アメリカの底流から深いうねりができて、あの国が変わっていることじゃないかっていうふうに私は感じるんですよね。
第2次革命は構造的
池上:「トランプ革命」じゃないかって思うんですよ。前にも佐藤さんと話したことがありましたが、例えば1917年のロシア革命(二月革命)の時に、当時のロシア社会民主労働党って主導者はインテリだけど、一般的な支持者たちは客観的に見ると粗野なわけです。それが帝政ロシアの貴族の本当にインテリで教養深い連中にしてみると、あんな粗野な連中に何ができるんだって。こうやって上から目線でばかにしていたら革命が起きちゃったという、それに似ていると思います。
佐藤:池上さんがおっしゃるように「トランプ革命」と言っていいと思います。しかも前回の第1次トランプ革命時はいろいろガタガタとしていましたが、今回の第2次トランプ革命は、構造的かもしれません。
池上:第1次の時は、共和党の主流から「こういう人を雇ったらどうですか?」みたいな形で登用していましたが、トランプ氏が自己流でいろんなことをやろうとすると、その度にブレーキをかけられる。結局、トランプ氏は次々にそういう連中をクビにしましたが、自分がやりたいのにいろんな妨害があってやれなくなった。
これは、影の政府というものが存在し、俺のやりたいことができなかったんだという、そういう思いが募ってきている。しかし、今回は誰を使えばいいのかってことを彼は学んでいるわけです。だから、まさにその彼が言う影の政府という連中をみんなクビにして、自分に忠誠心がある人だけを選んでやりたい放題をやるという、それができるようになる。まさに最高権力者の力をこれから発揮するということだと思います。
(構成/編集部・三島恵美子)
※AERA 2024年11月25日号より抜粋