2024年の秋の園遊会で皇后雅子さまが締めていた陣織の帯は、愛子さまとおそろいの「舞楽菱(ぶがくびし)」のモチーフ。舞楽の装束に用いられる文様で、菱文に唐草などが織り出された意匠で、雅子さまは過去にも同じ帯をご愛用=2024年10月30日、赤坂御苑、JMPA

「舞楽菱」とは、舞楽の装束に用いられる文様で、菱文に唐草などが織り出された意匠だ。

 おそろいではあるが、異なるのは菱文の大きさだ。愛子さまの帯の菱文は、雅子さまよりもずっと大きい。

「大きな菱形の文様は若々しく、愛子さまの振袖によく調和しています」
 

 雅子さまの「舞楽菱」の帯は、1999年や2018年の園遊会、2020年にご一家で大相撲を観戦した際にも締めていた品で、25年以上前から愛用されている。

 雅子さまのご愛用の柄を、愛子さまと「おそろい」にされたところに、母娘の絆が伝わってくるようだ。
 

愛子さまと雅子さまのふたつ目のおそろいは、「真糊(まのり)」による「糸目(いとめ)」と、「ぼかし染め」の技術を用いた最高峰の京友禅である点=2024年10月30日、赤坂御苑、JMPA

おそろいの京友禅

 ふたつ目の「おそろい」は、おふたりの着物に用いられた「真糊(まのり)」による「糸目(いとめ)」と、「ぼかし染め」を用いた優美な京友禅である点だ。

 まず雅子さまは、秋の園遊会にふさわしい紅葉を染め上げた京友禅。上品なぼかし染めの上には、線状の「野毛(のげ)」や「切箔」と呼ばれる四角形の金箔を散りばめ、「金砂子(きんすなご)」という金粉をあしらうことで豪華で幻想的な図柄が構築されている。

「梅や桜、紅葉が主役になる着物をお召しになる場合は、その花木が見頃を迎えるひと月ほど前から、盛りのすこし前までがよろしいでしょう。桜や紅葉の着物を周りの人たちに愛でてもらい、次の季節を連想していただくのが風雅な楽しみ方です。それに、どれほど美しい染織であっても自然の美しさには及びません」

 と、原さん。東京の紅葉の見ごろは11月から12月上旬。「雅子さまがなさったように、見ごろの時期は、本物の草花に主役を譲るのがよろしいでしょう」と話す。
 

 一方、愛子さまの本振袖は、雲がたなびく様子を表現した「雲取りぼかし」に、金箔と刺繍の豪華な扇子に草花を添えた優美な仕上がり。

「おふたりの着物は、いま手に入るなかで最高峰の手描き友禅」と原さんは話す。

「最高峰」と表現をしたのには理由がある。

 京友禅は、「下絵」「引き染め」「金彩」「刺繍」といった工程ごとの分業制で、愛子さまの本振袖は、いずれも最高の技術を持った職人の手によるものだという。
 

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愛子さまと雅子さまテーマカラーで統一