
雅子さまの紅葉や愛子さまの草花の意匠に用いられた希少な技術のひとつが、もち米や糠を主成分とした「真糊」による「糸目」の技術だ
友禅染は、まず図柄の輪郭を細く絞り出した糊(のり)で、布地に描く工程からはじまる。生地を染め残して輪郭を優美な白い線で表現するのが「糸目」の技法だ。
「京友禅とは、糸目を輪郭線とした塗り絵のようなものです。一方でいまは、ゴム糊を用いた糸目がほとんどで、真糊の糸目で染められた着物はごくわずかです。ましてや愛子さまのように本振袖となれば、京都でも年間10枚と染められていないはずです」
雅子さまの訪問着の「ぼかし染め」や、愛子さまの本振袖全体に配された「雲取りのぼかし染め」は、着物の印象を大きく左右する。
たとえば愛子さまの場合は、くっきりとした輪郭だが、雲の下はふんわりと消え入るような濃淡も見事。雲を背景に扇子と草花を浮かばせることで、一枚の着物のなかに空間が広がるような仕上がりだという。
「これほどの技術を持った職人を集めて着物を誂えるのも、めったにできることではありません。まさに最高峰の京友禅です」(原さん)
愛子さまと雅子さまのテーマカラー
三つ目の「おそろい」は、濃淡で変化をつけた「テーマカラー」を軸に、着物や帯の装いが構築されている点だ。
「愛子さまは桃色と帯の紅緋色、皇后さまは朱色を中心としたコーディネートです」
と、原さん。
着物は「染め」、織物である帯は「織り」、帯締めに用いる組み紐は「組み」と、和装は異なる技法の組み合わせだ。加えて、着物の染めは柔らかさ、織りは豪華さ、組みには立体感としなやかさ、と持ち味も異なる。
テーマカラーを軸に、着物と帯、帯締めを優雅に調和させているのが、皇后さまの着こなし、と原さん。
「愛子さまの着物にも、同じ感性と美意識を感じます。着物に親しんでいるご家庭では、お母さまが折に触れて和装の知識やしきたりを伝えるものです。皇后さまと愛子さまもそのようにお過ごしなのかもしれませんね」
秋の園遊会で雅子さまは、愛子さまに視線を送ることはなく、愛子さまは、成年皇族としておひとりで堂々と歩かれている。一方で、おふたりの装いに見えた共通の美意識。そこには、皇后と内親王との確かな信頼と絆が伝わってくるようだ。
(AERA dot.編集部・永井貴子)

