教育関連職の女性(48)は、"疑似専業主婦"時代、専業主婦は自分には向いていないと痛感。「私にとって仕事は精神安定剤なのだと感じました」(写真:Getty Images)
この記事の写真をすべて見る

 専業主婦の「働くのは“負け”」という言葉に頭痛がした育休中の女性、新生児を抱えてキャリアを考える友人に絶句した専業主婦。女性たちが抱えるそれぞれのモヤモヤは男性にも影響を与えている。AERA 2024年11月18日号より。

【図表を見る】「ホンネはどっち?専業主婦になりたい?なりたくない?」はこちら

*  *  *

 女性たちが抱える互いへのモヤモヤは男性にも影を落とす。

「妻が専業主婦の男性」と「共働きの男性」では、「柔軟性が異なると感じる」と話すのは、東京都の会社員女性(47)だ。

「共働きの男性は各々バックグラウンドが異なることを認識しているため、理解があるケースが多い。一方、妻が専業主婦の男性は『一生仕事に全振りできる』という前提で物事を考えるので、それ以外の想像力が乏しい印象です」

 例えば、共働きの社員が、家庭の事情でできない仕事があると訴えると、個別の話にされたり、文句と捉えられたりして、働く気があまりないとみなされてしまうことがあるという。

 この女性の取引先の共働きの男性社員は、家族が体調不良になった時、妻が専業主婦の上司に相談しなかった。「言ってもわかってもらえなさそうだったから」とこぼす姿を見て、女性は「(立場が違うと)わかり合えないのだろうかと思ってしまった」と話す。

 両者の間にある溝は確かに存在するようだが、共働き世帯が増え続けているにもかかわらず、その溝は埋まらないのだろうか。

 東京都の自営業の女性(40)は、20代で結婚を機に退職し、専業主婦になった。長男(9)の小学校受験のため通った教室では「働いているお母さんと、働いていない私とでは全く違っていた」と振り返る。特に顕著だったのは、絵を描く課題で使用するクーピーの削り具合だったという。

「本番同様に先が尖った状態で練習しないと意味がないのに、働いているご家庭のペン先の削り具合はバラバラでした。お洋服も整っていないことがあり、一分一秒たりとも余裕がなく、そこまで気が回らないんだなと思っていました」

次のページ
多様化するキャリア