昨季よりも打球速度が上がった大谷。自己最速と並ぶ191キロを記録した32号本塁打では仁王立ちしたまま打球のゆくえを見守った=2024年7月27日(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)
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 米野球界初となる50本塁打、50盗塁の「50-50」達成した大谷翔平選手。今季は全54本塁打を記録し、偉大なる名選手たちと肩を並べたが、本塁打の打球速度や飛距離なども驚異的だった。AERA 2024年11月18日号より。

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 何度見返しても爽快だ。MLB公式サイトの動画ページで「Ohtani home run」と検索すれば、大谷翔平の本塁打の動画がずらりと並ぶ。どの動画を開いてもスカッとすること間違いなし。前人未到の「50本塁打・50盗塁」達成、そしてドジャースのワールドシリーズ優勝で幕を閉じた今季の大谷の全54本塁打は爽快感と、そして驚きに満ちている。各種データを基に振り返ってみたい。

 1920年にベーブ・ルースが初めて50本超えとなる54本塁打を記録してから、米大リーグでシーズン50本塁打以上を記録したのは2023年までに31人。大谷は32人目として名を刻んだ。ちなみに今季58本塁打を放ったアーロン・ジャッジ(ヤンキース)は17年に52本塁打、22年には62本塁打と、すでに3度の50本超えを果たしている。

 シーズン本塁打数でも偉大なる名選手たちと肩を並べた大谷だが、打球速度や飛距離など、本塁打の“質”でも群を抜く数字を残す。

高地で最長距離アーチ

 今季の本塁打の平均飛距離ランキングで、大谷はメジャー全体6位の126.5メートル。30本塁打以上を打った選手ではトップの数字だ。最も遠くへ飛ばしたのは第20号で145メートル。この本塁打が生まれた敵地コロラドのクアーズ・フィールドは、高地にあるために気圧が低く、空気抵抗の少なさから飛距離がよく伸びるとされている。とはいえ、バックスクリーンにある森の奥に消えていく打球は圧巻。あまりの飛距離に驚きを通り越してか、相手投手も笑みを浮かべていたのが印象的だった。

 記者が思わず「これはかっこいい」と感嘆したのは今季の飛距離第3位の第10号だ。カキンッと快音を響かせて確信歩き。相手チームの内野手は振り返りもせずにその場に立ち尽くしていた。ファンにとっては大興奮の、相手からすれば絶望的な打球だった。

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本拠地は打球飛ばない