目に見えてそのすごさがわかりやすい飛距離とは別に、近年、重視されるのが打球速度。大谷は今季、平均154.2キロを記録し、昨季の151.9キロから数字を伸ばしている。大リーグ評論家の福島良一さんはこう言う。
「打球速度が増したことで飛距離も伸び、より豪快な本塁打が増えたのです。今季、大谷選手が打った450フィート(約137メートル)超えの本塁打は8本で、これはリーグ最多の数字です」
大谷が今季に放った本塁打の最速は、第6号と第32号の191キロ。いずれも強烈なインパクト音を残してバットを振り抜いた瞬間に観客は沸き立ち、打球は文字通りあっという間に右翼席上段に飛び込んだ。相手チームの野手が打たれた瞬間に打球を追うことをしなかったほどにすさまじい速度の本塁打だった。
本拠地は打球飛ばない
打球速度に加えて、さらに注目されるのが「バレルゾーン」と呼ばれる指標だ。長打が出やすいとされる打球速度と打球角度の範囲のことを言い、打球速度158キロ以上、打球角度26~30度で放たれた打球は長打になる確率が高くなる。
「このバレルゾーンに入った打球の本数が、今季の大谷選手は109本。これはジャッジの108本を上回り、メジャートップです。長打力の高さがここにも表れていると思います」(福島さん)
大谷の54本塁打中、ほぼすべての打球が158キロ以上の打球速度を記録しているが、バレルゾーンに入ったのは16本。これは角度が“最適”でなくとも、その打球速度をもって外野席に放り込める規格外のパワーがあるといえるのかもしれない。
規格外といえば、大谷にはこんなデータもある。今季、本拠ドジャースタジアムで打った本塁打は28本。対してロード(遠征試合)では26本。
「ドジャースタジアムは打球が飛ばない球場として知られていて、ドジャースはロードでの本塁打数のほうが多い選手がほとんどなんです。今年、大谷選手に塗り替えられるまで、球団シーズン最多本塁打記録を持っていたショーン・グリーンは2001年に49本塁打を放っていますが、そのうち30本がロードでのものでした。この事実からも大谷選手の並外れたパワーがうかがえます」(同)
(編集部・秦正理)
※AERA 2024年11月18日号より抜粋