スマホ利用者はアップルの「App Store」、グーグルの「Google Play」のいずれかを経由し、必要なアプリをインストールして使用を始める。この際、有料アプリをインストールしたり、アプリの中で課金したりすると、支払った料金はいったんアップルやグーグルの口座に入る。その後、手数料として最大30%を差し引いた額がアプリ事業者に振り込まれるシステムになっている。
つまり、手数料はあらかじめ加算され、私たちユーザーがアップルやグーグルに支払っているのと同じ、ということだ。この「デジタル赤字」の額はどれくらいなのか。
市場の独占を防ぐ規制、欧米や日本で広がる
アプリ事業者でつくる「モバイル・コンテンツ・フォーラム」の調査によると、2023年のモバイルコンテンツ市場の市場規模は2兆9329億円。このうち最も大きな「ゲーム・ソーシャルゲーム等市場」は1兆4532億円。その手数料は4360億円ほどになる。
「アップルやグーグルからすれば、自社のアプリストアや決済システムを使って取引している以上、手数料を取るのは当然という認識なのですが、30%の手数料って高いと思いませんか?」
こう問いかけるのは同フォーラムの岸原孝昌専務理事だ。
「自由競争を勝ち抜いて市場を独占した巨大ITには相応の対価を払うのは当たり前という意識が、日本社会ではいまだに支配的なように感じます。しかし、それは時代遅れで国際常識とかけ離れてしまっています」
特定企業が市場を独占し、特権的な立場を駆使して巨利を稼ぎ出す構造が定着すると、社会全体のイノベーションや便益は衰退する。行き過ぎた資本主義は社会の発展を阻む悪だというのが、欧米先進国に共通する考え方だ。
「今の世界の流れでは、30%の手数料は取り過ぎ、要するに搾取だという考えに基づいて、それを是正する動きが始まっています」(岸原さん)
EUで今年3月から本格運用が始まった「デジタル市場法(DMA)」。巨大IT企業による市場の独占を防ぐのが狙いで、アプリストアで自社の決済システムなどを使うよう求めることも禁止している。