違反した場合、全世界での年間売り上げの最大10%の制裁金を科すことができる。米国でも司法省などの規制当局が巨大IT企業に対し、日本の独占禁止法にあたる反トラスト法違反で訴えを起こし、グーグルに関しては事業分割に向けた措置を検討していることも明らかにした。
日本でも今年6月、「スマホソフトウェア競争促進法」が成立した。アップルとグーグルの2社を念頭に、アプリストアや決済システムを自社のものに限ったり、検索で自社サービスを優先的に表示したりする行為を禁じている。違反行為には関連する国内売上高の20%と、独占禁止法より重い課徴金を科す。岸原さんは言う。
「アプリストアの手数料についてDMAに基づく判断が来春、EUで決定します。このEUの決定が先行事例としてグローバル標準になる可能性が高いと見ています」
巨大IT業界の「稼ぎ方」に世界的なメスが入るなか、日本でもデジタル赤字とどう向き合うのかが問われている。岸原さんは、デジタル赤字の増大は個人の生活を直撃しつつある、と指摘する。
「コンテンツや端末の高額化などによって、家計への負担は増大しています。例えば、アップルのアイフォーンの最新機種価格(最上位モデル)は初代と比べて約10倍に膨らんでいます」
アイフォーンの価格がはね上がっても、バージョンアップのたびに新機種を購入せずにはいられない人は少なくない。
なぜそうなるのか。巨大IT企業に対して立場の弱いアプリ事業者が「デジタル小作人」と称されるようになった経緯を踏まえ、岸原さんはこんな思いを吐露した。
「アプリ事業者が『デジタル小作人』だとすれば、それを利用しているユーザーは『デジタル家畜』とも言えます。アップルの商品を使えることに喜びを感じ、端末価格が生活実態と釣り合わない高額にはね上がっても使い続ける。これは飼いならされた家畜が柵から出ようとしないのと同じように私には見えます」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2024年11月18日号より抜粋