佐川さんによると、日本でも販売代理店を通じ、今年4月にチームズは別途販売する方針が伝えられた。しかしその後、別途販売は「大企業に限定する」と一部、軌道修正する方針も伝えられたという。
問題はチームズをマイクロソフト365と別途契約すると実質値上げになることだ。
「かりに来年以降、セット販売中止が中小企業まで広がると、実質値上げの影響を受ける層がかなり拡大するため先高感が消えません」(同)
マイクロソフトから年末に翌年度の使用料を伝えられれば、値上げ幅が法外でも受け入れるしかない。この現状からはなかなか抜け出せそうにないという。その理由は、市場でマイクロソフト製品が「一強」であるという事実に尽きる。ビジネスで使われているパソコンは、マイクロソフトが開発した基本ソフト(OS)「ウインドウズ」のシェアが圧倒している。このOSと相性のいいアプリやクラウド製品を選ぶのが最も利便性が高いため、国産クラウドなどに切り替える流れにはすぐにはならないというのだ。たしかに、パソコンでワードやエクセルが使えないと仕事にならない。代替ソフトがそう簡単に流通するとも思えない。
スマートフォンを使っても、デジタル赤字が生じる恐れ
このまま、デジタル赤字が続けばどうなるのか。
「デジタル赤字として膨大な資金が海外に流出し続けることで本来、国内企業の開発費に充てられる予算が回らなくなると、人材の海外流出にもつながりかねません。デジタル赤字が進めば進むほど、負のスパイラルに陥ることを懸念しています」
佐川さんはこう続けた。
「DXの推進によってクラウド製品の利用は増えていくと捉えていますし、そうなるべきだと考えています。しかし、海外の特定のサービス事業者に依存することは、価格決定や規約変更などのイニシアチブを握られる不利性にとどまらず、セキュリティー上のリスクもはらんでいることを肝に銘じるべきだと思います」
日常生活に不可欠なスマートフォンもデジタル赤字を生むツールの一つだ。
スマホの基本ソフト(OS)の国内シェアは、グーグルの「Android」とアップルの「iOS」の2強で占められている。この優位性を利用し、両社はスマホ端末の売り上げ以外にも利益を吸い上げる仕組みを確立している。その一つが「アプリストア」だ。