歯周病を予防するにはどうすればいいか。医師の各務康貴さんは「口腔ケアを歯ブラシで済ませている人は注意が必要だ。歯ブラシを使った歯磨きだけでは、60%しか歯垢を落としきれない」という――。
歯周病の怖さは「歯を失う」だけではない
歯は食事を楽しむことはもちろん、発音や顔の印象にも大きく関わっています。そんな大切な歯を失う原因の第1位の「歯周病」に、日本の成人の約8割がかかっていることはご存じでしょうか?
歯周病とは、歯の周りの骨や組織が細菌によって破壊される病気です。最初は歯茎の炎症から始まり、放置するとやがて歯を支える骨を破壊します。特に働き盛りの世代では、忙しさの中で口腔ケアが不十分になりやすく、気づかないうちに歯周病が進行してしまうことも少なくありません。
しかし、歯周病が恐ろしいのは単に歯を失うリスクだけではありません。実は全身の健康にも深く関係しています。
実際に私が救急医として勤務していた際、糖尿病などの病気と歯周病が同時に発生し、その影響で相互に病状が悪化していた患者を数多く見ました。歯と身体はお互いに影響することで、深刻な状態を引き起こすことがあります。
妊婦が歯周病になると、出産に影響
では、歯周病と全身の関係には具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
重要な血管が傷つく
歯周病菌が歯ぐきの血管を通じて全身に広がることで、血管の炎症を引き起こしたり、心臓の中に菌の塊を作って心臓や脳の血管をふさいでしまうことがあります。
また、糖尿病の患者は免疫力が低下しているため、歯周病が進行しやすくなると同時に、歯周病の慢性的な血管の炎症が血糖値の上下を激しくするという悪循環を引き起こします。
認知症の進行に影響
近年、歯周病と認知症、特にアルツハイマー型認知症の進行を助長する可能性が示されてきています。歯周病による慢性的な炎症や酵素が悪影響を与えるとみられ、関連性が研究されています。
低体重児・早産のリスク
若い女性にとっても歯周病のリスクは無視できません。妊娠中はエストロゲンという女性ホルモンのバランスの変化で歯周病にかかりやすくなると言われてます。
歯周病にかかることによって、低体重児および早産のリスクが7倍ほど高くなることも明らかになっています。これは、タバコやアルコール、高齢出産よりもはるかに高いリスクです。