指定管理者制度の課題を浮き彫りにした「ツタヤ図書館問題」
ちょうどその頃、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が運営する武雄市図書館・歴史資料館において、同社系列の古書店から極端に市場価値の低い古本を大量に受け入れていたことが発覚して、ツタヤ図書館についての議論がSNS上でヒートアップしていた。
ツタヤ図書館問題も、筆者が足立区立図書館でみてきたケースと同じく、企業の野放図な利益追及を許す指定管理者制度の問題をクローズアップしているように感じた。
どちらのケースも図書館運営に「民間のノウハウ」を取り入れたと賞賛されていたが、その内実は、文字どおり「ど素人」にすぎなかった。時給180円でスタッフに「内職」させた足立区地場の金属加工業者M社と同じく、大手レンタル・書店に、図書館運営のノウハウなどあるはずもなく、つくられたのは高層書架に空箱のダミー本を飾って演出したブックカフェに客を集める商業施設である。
それを「賑(にぎ)わい創出」と称してありがたがる自治体の事業者選定プロセスは、公正公平とはほど遠いものだった。
ツタヤ図書館は、それまで日本全国で急速に進められてきた民間委託というものの実態が、単に特定企業に利益供与をするための利権構造にすぎないことをはからずも露呈したといえる。
図書館という、民間企業がまったく手がけてこなかった特殊な施設だからこそ、その運営を通してみれば、それまではあたり前のように「ある」と思われていた公務における「民間のノウハウ」がまるで空虚なものであったことを、クッキリと浮かび上がらせることができたといえるだろう。