卓球において、はかりしれない努力をしてきた(撮影/朝日新聞出版写真映像部・上田泰世)

「誹謗中傷がゼロになることはないと思う」と水谷さんは達観している。

だからといって諦めない。「減らしていける」と信じている。そのために自ら声を上げる。

「パリ五輪でも誹謗中傷についてテレビやネットニュースが取り上げる機会が増えました。僕が声を上げて拡散されると、それが報じられることもある。

そんなニュースを見て『誹謗中傷は、やめよう』と思う人が少しは出てくるだろうと思っています」

 8月に自分への誹謗中傷を公表したのは、冷静な考えがあってのことだった。

「パリ五輪(7月26日〜8月11日)はアスリートへの誹謗中傷が注目されやすいタイミングと考え、僕へのアンチコメントを公開しました。

公開したことで、自分がさらなる誹謗中傷を受けることはわかっていましたが、一定の効果はあったかと」

ブロックするのは違う

 ここで筆者は水谷さんに聞いた。Xのリプ(返信)は仕方ないにしても、なぜDМを拒否設定にしないんですか?

「人とのつながりとして開けておきたいんです。DMがきっかけでプライベートでも仲良くなれた方も多いので。純粋にファンの方もたくさんのメッセージを送ってくれます。

全部に返信はできませんが、自分の励みにもなるし、とてもうれしい」

 ひどい言葉を投げつけてくるアカウントも、ブロックしない。某政治家は「ブロックしてしまえばいい」と話していたが。

「ブロックは違うと僕は思うんです。誹謗中傷を受ける『被害者側』がブロックという行動を選択させられるのは変だなと。閉じるという選択は自分にはありません。

閉じたら閉じたで『あいつ、閉じやがった』とネタにされ、たたかれますし……。

ただ、読みたくないコメントを表示しない『ミュート』はどんどん利用します。悪口なんて、数えきれないほど来ますから」

 水谷さんのXアカウントでは、株に関する投稿も見かける。2018年に株式投資をはじめ、今年で7年目に入った。

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株式投資で失敗