安田浩一さん(撮影/朝日新聞出版写真映像部・和仁貢介)
安田浩一さん(撮影/朝日新聞出版写真映像部・和仁貢介)

対話から浮かんだ大きなテーマ『民主主義って何だ?』

安田:一連の対話から浮かんできたのは「民主主義って、そもそも何なんだろう」っていうことですね。これはすごく大きな問題で、誰も明確に「民主主義とは」を示すことができない。それでも考え続けなくちゃならない、大切なことであるには違いない。

和田:小川さんと対話したことで何かが変わったわけではないんだけど、私の苦しみは社会構造が原因で私が悪いんじゃないとわかったら、不安がちょっと減ってきた気がしたんです。そのことを小川さんに伝えたら「国の問題を政治家と一緒に考え、悩み、理解する。それをする人が一人でも増えれば、できることはもっともっと増えていくはずだ」って。この言葉を電車の中で思い返していて、ふと「この対話は民主主義なんじゃないのかな?」と思った。最もシンプルで根源的で、難しいテーマですが、それこそがこの本の裏テーマになっていったんです。

安田:民主主義って、美しい文脈で使われることが多いんだけど、いざそれを実現しようとすると、めちゃくちゃ手間もコストもかかるんですよ。だからって逃げちゃいけないし、愚直に、そこを目指していくことが大事。政治家だけが民主主義を実現させてくれるわけでもない。僕ら市民も、その覚悟を持たなくちゃいけないんだってことを、この本で再認識しましたね。

和田:そんな風に読み取っていただけてうれしいです。民主主義って日本ではもしかしなくても、苦手な人が多いですよね。「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」みたいな人がいて、なんとかしてくれると思い込んで選挙にも足が遠いのかも。いないから! やるのは私たち市民!と本を書きながら自覚しました。

安田:小川さんの言葉で「人間の尊重」っていうのが出てきますよね。生きる権利、当たり前に生活できる権利。いい言葉だと思う。人々の中には「もう死にたい」と考えるほど苦しんでる人もいるけれど、そういう人の「生きる権利」をどれだけ尊重できるか。これが民主主義の最も大事な役割であるはず。と同時に、その役割を果たすには、お金も労力も知恵も、多大なコストを伴う。そういうことを、長い時間をかけてでも、やらなくちゃいけないよねっていう訴えが、行間からあふれている。

和田:今まさに考えなきゃいけないことですよね。この本が、そのきっかけになれたらすごくうれしいです!

(構成:黒川エダ)

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