作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。
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先日、講演で福井県越前市に伺いました。
北陸新幹線が敦賀まで開通したのが今年3月16日。その日はちょうど石川県かほく市で講演があり、私も北陸新幹線に乗っていました。
降車した金沢駅も大賑わいでしたが、肝心の開通先には行けぬまま。今回、満を持して福井県まで足を運べたというわけです。
日帰りで行くのも勿体ないと、前日に富山県で1泊し、講演のあとは福井で1泊することにしました。慌ただしく移動することが多いなか、私にしては珍しくゆったりと旅を楽しむことにしたのです。
富山でゆっくり温泉に浸かった翌日、私は再び北陸新幹線に乗り、講演会場がある越前たけふ駅に降り立ちました。さすが、3月にできたばかりの駅。どこもかしこも綺麗です。駅の外はのどかな景色。 ふと見ると、幅広い世代の女性たちが大きな荷物をもって駅に佇んでいます。おや? これは予想と異なる光景。
駅で私の到着を待っていてくださった奇特な方がおり、聞けば今日はNumber_iのライブがあるのだとか。会場のサンドーム福井の収容人数は1万人。そりゃあ駅前も賑わうというものだ。
講演が無事に終わり駅に戻ると、駅周辺の人の数はグンと増えていました。300人以上はいたのではないかしら。昼の部のライブ終わりでしょうか、グッズTシャツを着こんだファンたちは誰もが笑顔で、こちらまでニコニコが伝染してくるほど。
60代半ばと思しきご夫婦が、お揃いのグッズTシャツを着てベンチで仲睦まじく食事をとっている姿には不覚にも目が潤んでしまいました。こんなに幅広い世代の人たちを幸せにするNumber_iは、さぞかし魅力的なアーティストなのでしょう。
以前の私なら、特になにも感じなかったでしょう。新幹線に乗ってまでライブ観戦なんて、大変だなあとすら思ったかも。しかし、誰かを応援する楽しさを知ったいまの私は、ファンの気持ちが手に取るようにわかります。遠征、底抜けに楽しいよね!
スーさん!と声を掛けられ振り向くと、そこには知らない人が。驚くことに、Number_iのファンであり私のポッドキャストリスナーでもある方でした。奇跡!
というわけで、私も楽しいプロレス観戦遠征に行ってきます。場所は網走! そこから大阪に移動予定。楽しみ!
※AERA 2024年11月11日号