確かに甲斐の巨人移籍が実現した場合、出場機会の減少が予想されるのが大城だ。昨年は打率.281、16本塁打、55打点と自己最高の成績をマークし、2度目のベストナインを受賞。「強打の捕手」で正捕手を務めていたが、今季は先発マスクの機会が激減した。強打を生かして一塁を守る機会が多かったが、不慣れな守備で苦戦する場面が目立った。今年9月に国内FA権を取得。捕手での出場にこだわるなら、他球団への移籍が現実味を帯びる。
セ・リーグ他球団のコーチは高い評価を口にする。
「大城は守備面の物足りなさを指摘されるが、決してそうは感じないですね。盗塁阻止率が高いですし、リード面でも成長の跡を見せている。もちろん打撃も魅力で球界トップクラスの捕手だと思います。推定年俸1億3000万円は高いとは感じないですし、FA権を行使したら獲得に興味を示す球団は多いと思います」
「捕手大シャッフル」
試合に出場できる捕手は1枠しかないため、正捕手が他球団から移籍してくると、他の捕手が新天地に移るケースは珍しくない。西武の正捕手だった森友哉が22年オフにFA権を行使してオリックスに移籍した際は、同じタイミングでオリックスの伏見寅威が日本ハムにFA移籍している。
捕手の移籍がチームの命運を変えることもある。横浜(現DeNA)の正捕手として活躍していた谷繁元信が01年オフに中日にFA移籍すると、落合博満監督の下でリーグ優勝4度、07年の日本一に大きく貢献した。一方で谷繁が抜けた横浜は低迷期に突入。正捕手を固定できず、02年からの10年間で9度の最下位と苦しんだ。
今オフは甲斐、大城以外にも昨年阪神を38年ぶりの日本一に導いた坂本誠志郎、中日の木下拓哉が国内FA有資格者として公示された。球界全体を巻き込んだ「捕手大シャッフル」が起きるか。移籍劇がセ・パ両リーグの勢力図を塗り替える可能性があり、各選手の決断が注目される。
(今川秀悟)