古い自民党の重鎮たちは淘汰される
さらに、厳しい選挙結果になった責任をすべて石破首相に負わせることに、角谷氏は疑問を呈する。
「2000万円の支給を決めたのは選挙資金に関するすべてを差配する森山裕幹事長です。そもそも、批判を浴びた早期解散についても、石破さんが自民党総裁になった時点で党本部内で決まっていたこと。自身の首相としてのビジョンが国民に伝わらないうちに選挙戦に突入して、岸田政権への通信簿ともいえる逆風にさらされているのは酷だなと思います」
とはいえ、自公で大幅な議席減が避けられない情勢を踏まえると、日本維新の会や国民民主党を巻き込んで連立を組むという可能性も浮上する。しかし、角谷氏はこれも現実的ではないと語る。
「維新や国民にとっては、『権力にホイホイついていった』『裏切り者のウソつき野党』などと世間から大きな反感を買う可能性が高い。来年7月には参院選が控えている以上、連立の誘いにはやすやすとは乗らないでしょう。石破さんとしては、めぼしい野党議員を一人や二人、一本釣りで閣僚に投入するくらいが関の山だと思います」
石破氏といえば、長らく「国民には人気、党内では不人気」と言われ、党内野党の立場を貫いていたことから、総裁選時には「物言う男」「自民党の浄化役」として大きな期待を集めた。
しかし、最新の世論調査の支持率は、NHK(18~20日実施)が前週から3ポイント減の41%、朝日新聞(19、20日実施)が組閣直後の46%から大幅減の33%と、国民人気にも陰りが見えている。
この落胆ムードに対し、角谷氏は「石破さんが“魔法のつえ”を持っていると勘違いしているのでは?」とくぎをさす。
「首相就任早々、新聞各紙は『石破カラーどこへ?』などと批判ムードになりました。でも、自民党が総裁の言うことをピタっと聞くなんて安倍政権の時以外なかったわけで、党内基盤が弱い石破さんが主義主張を通すには相当なエネルギーが必要です。森山幹事長が先日、選挙後の裏金議員の役職登用について『差別が続いてはいけない』と容認する発言をしましたが、そういう古い自民党の価値観に染まった重鎮たちが今回の選挙で淘汰(とうた)されれば、石破カラーは出しやすくなると思いますよ」
自民大敗は、もしかしたら石破首相が本領を発揮できる奇貨となるかもしれない。
(AERA dot.編集部・大谷百合絵)