集団で工場に出勤する北朝鮮の労働者ら=4月、中国遼寧省(写真:金 順姫)

 それなのに、いまでも中国に多くの労働者が残っているのはなぜか。北朝鮮は制裁を意識して研修などの名目で労働者を送り出し、中国側も事実上黙認してきたとみられている。中国人より割安で雇える北朝鮮人労働者は、中国で重宝される存在でもある。

 中国で働く北朝鮮人労働者が何人いるのかは公表されておらず、正確な人数はわからない。最盛期にいたのは「10万人」という説がこれまで広く語られてきた。中国にいる北朝鮮関係筋や、中朝関係に詳しい中国共産党関係者は「多い時で8万人程度だった」という見方を示す。

 今年に入り、中国東北部の複数の工場で北朝鮮人労働者たちによるストライキが起きたという情報が、事情を知る関係者たちからもたらされた。

異例のストライキ

 中国にいる北朝鮮人貿易商や北朝鮮関係筋の話によると、1月に吉林省延辺朝鮮族自治州で、2月には遼寧省丹東市でストライキがあった。1月のストライキでは労働者らが数日間、出勤するのを拒否。帰国後にもらえるはずの賃金のうち数カ月分が支払われないことを知ったために行動に及んだという。

 丹東市内の別の工場でも3月、数日間のストライキが起きたという。数十人が参加し、「早く帰国させてほしい」と要求した。工場では労働者たちをなだめようと、近日中に帰国させることにし、食事の肉や果物を増量した。ただ、譲歩の姿勢は見せかけで、北朝鮮当局は労働者たちを帰国後に厳しく罰する方針を決めていた。

 そして5月、ストライキを決行した労働者たちはバスに乗り、国境を流れる鴨緑江にかかる中朝友誼橋を渡って帰国していった。「川の向こうに渡った途端、終わりだ」と工場関係者。拘束され、徹底的な思想教育が施されるうえ、もらえるはずだった賃金も取り上げられるだろうと語った。

「晴れの日」用の服

 北朝鮮の外貨稼ぎのために中国に派遣された北朝鮮人労働者たちは、厳しい管理下に置かれてきた。寮などに住み、数人で休日に出かけることもあるが、行動の自由はない。それでもまじめに仕事をし、管理に従ってきた。そんな労働者たちが起こしたストライキは、「帰国できないストレス」が大きな要因になっていると複数の関係者が証言した。

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