東京10区のポスター掲示板。自民党の鈴木隼人氏(左)と立憲民主党の鈴木庸介氏(撮影/上田耕司)
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 27日投開票の総選挙は、自公で過半数割れの報道が出るなど“波乱”が予想される。そんな中、東京10区(豊島区、文京区)では一風変わった“デッドヒート”が展開されている。接戦が予想される自民党と立憲民主党の候補者の名字が共に「鈴木」だからだ。「鈴木」とだけ書かれた投票用紙は按分票になってしまうため、両陣営は「下の名前」を覚えてもらおうと必死に訴える。一部有権者からは「紛らわしい」との声も漏れる。異色の選挙戦を取材した。

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 東京10区には2人の「鈴木さん」が立候補している。立憲民主党の鈴木庸介(ようすけ)氏(48)と自民党の鈴木隼人(はやと)氏(47)だ。

 同選挙区ではこの「ダブル鈴木」が激しく競り合っており、AERA dot.が入手した情勢調査では、支持率は隼人氏、庸介氏ともに3割ほどで僅差で競り合っている。21年10月に行われた前回の総選挙では、選挙区では隼人氏が勝利し、庸介氏は比例復活で当選した。

 お互いに前職の衆院議員で、年齢も近く、スリムな体形…など共通点も多い。そのため、各陣営は投票に向けて「下の名前」をいかに浸透させるかに注力している。

 10月22日、立憲の鈴木庸介氏は文京区小石川のスーパー前で街頭演説を行った。タスキには「ようすけ」の名前が大きく印字され、のぼりにも「ようすけ街頭演説」と記されていた。

立憲民主党の鈴木庸介氏(撮影/上田耕司)

「投票用紙に『鈴木』とだけ書いてあると、按分票になってしまいます。(両候補が)獲得した投票数に応じて、2人に振り分けられることになる。もちろん、『鈴木ようすけ』とフルネームで書いてもらうのが一番いいのですが、『ようすけ』だけでも私の方に入ります」(庸介氏)

 一方、自民の鈴木隼人氏は翌23日に文京区の後楽園駅前で街頭演説会を開いた。チラシを配っていた事務所の男性スタッフは「こんばんは! はやと、はやと、はやと、鈴木はやとをお願いします」と叫んでいた。

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「下の名前をよく見ながら書きます」