ミカン箱で作った台上で演説
一方の世耕氏の陣営には派手なものはない。世耕氏の出陣式は、海南市の小さな会社の敷地で行われた。選挙事務所に「ため書き」は10枚ほど張られているだけで、国会議員は安倍派だった高木啓前衆院議員のものしか見当たらなかった。
世耕氏の集会には約300人の支援者が集まり、3つのミカン箱を連結した台に乗った世耕氏は裏金の問題に触れ、
「大失敗した。申し訳ない」
と頭を下げた。続けて、
「(裏金に)関係した議員の中では最も重い離党という判断を、黙って、言い訳もせず受けた。無所属の議員となって、裸一貫で活動している」
「大きな企業、団体からドーンというような票はありません。積み重ねるだけ」
と訴えた。
支援者から、
「世耕先生が総理大臣を目指していいですか!」
と声が出ると大きな拍手がわき、世耕氏は破顔一笑。
その傍らには、元民主党参院議員で妻の林久美子氏が「Wife(妻)」という白たすきをかけてずっと寄り添った。世耕氏が有権者と握手でスキンシップを始めると、久美子氏が周囲を見回して、
「弘成さん、あちらにも」
と息の合った「内助の功」を見せていた。
昭恵夫人が「主人の魂が残っている」
21日には安倍晋三元首相の昭恵夫人が世耕氏の応援に駆け付け、
「世耕ちゃんのところへ行ってあげてと主人が言っていると思う」
と安倍派の幹部だった世耕氏を応援。
世耕氏は安倍元首相と靴のサイズがまったく同じといい、選挙戦では「形見」としてもらった靴を履いているという。昭恵夫人は、
「主人の魂がこの靴の中にも残っている」
と言って支援を訴えた。
連立与党の公明党は自主投票を決め、二階氏に推薦を出していない。だが、世耕氏は情勢調査の結果も見て余裕が出たのか、10月20日の演説ではこんなことを口にした。
「正直に皆さんに言います。比例は公明党に入れてあげてください。公明党さんとは連携しており、戦略的なこともあります」
あたかも、公明党と「密約」があるかのような口ぶりだ。