「ダンシング・ヒーロー」にのせて踊るキレキレの「バブリーダンス」を覚えている人も多いだろう。あれから7年、伊原六花の俳優としての存在感は日ごとに大きくなっている。
【写真10枚】伊原六花の目ヂカラはこちら。フレッシュな笑顔も
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持っているものはすごく少ない
身体の動きでセリフ以上に多くを語っている。それが、彼女を見たときの第一印象だった。なぜか目が離せないし、追い続けたくなる。語る身体の延長にセリフがあるから、セリフ回しに無理がない。伊原六花は俳優として、稀有な魅力を持っていると思う。だが、本人からは意外な答えが返ってきた。
「私は、自分は持っているものがすごく少ないと思っています」
上演中の舞台「台風23号」の初日まで1週間を切ったある日、彼女を訪ねた。緊張しているかと尋ねると、明るくこう言った。
「小屋入りする前が一番、緊張とワクワク感に包まれますね。セットが入り、舞台に照明があたり、これまで稽古をしてきた“あの瞬間、あの空間”がどのように立ち上がってくるのだろう。それを考えるのが、いま、一番の楽しみです」
どんな日々を生きているか
「台風23号」は、作・演出を赤堀雅秋が務め、森田剛、間宮祥太朗らが共演する舞台作品だ。
人間の生々しさ、醜いも美しいもすべてを赤裸々に舞台に載せる、赤堀の作風に強く惹かれてきた。舞台上では、秋山菜津子らベテラン俳優とのシーンも多い。
特に印象に残っている赤堀の言葉があるという。
“僕の作品は、自宅を出てそのままの状態でステージに立っても成立するような芝居に見えるかもしれないけれど、そこには自分の足で立ち生きてきた人々の葛藤や経験の積み重ねがある。それらがあってこそ成立する会話の応酬だから、ちゃんと集中し、いまからその世界で生きるぞ、という強い気持ちを持って、ステージに上がってください――”
「本当にその通りだな、と。登場人物たちの言葉は、日常のどこかで聞くような言葉なので、どういう気持ちでどんな日々を生きているのか、というのは慣れずに考えていかなければ、と思いました」
もちろん、ただ漫然と稽古場に行ったことはない。