平地が少ない能登半島の地理的な制約もあり、地震後に建設された仮設住宅の多くが海や河川に近い地域に点在。そこを豪雨が襲った
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 元日の大地震、9月下旬に豪雨という「複合災害」に見舞われた石川県能登地方。長期の避難生活を余儀なくされる高齢者も少なくない。複合災害や高齢化も見越した支援が必要だ。AERA 2024年10月28日号より。

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 長い避難生活を経て仮設住宅に入った高齢者が浸水被害に遭い、再び避難生活を余儀なくされる事例もある。宮腰昇一さん(76)もその一人だ。5月に入居した「宅田町第2団地」は河原田川のすぐそばで、直撃を食らった。

「気づいた時には100戸以上ある仮設住宅一帯が茶色い水に囲まれていた」

 県の発表では、9月22日時点で輪島市と珠洲市の計11カ所の仮設住宅で床上浸水が確認されたという。

 地震で自宅が全壊した宮腰さんは、市内の福祉避難所に入った。その後、一時は富山県へ二次避難していた。輪島の仮設住宅に移って4カ月ほどで豪雨被害に遭う。腰まで水に浸かって避難先もわからず呆然としていたところ、救助の人に発見された。

 被災直後、一時的に避難していた市立輪島病院で電話インタビューに応じた宮腰さんは、力なくこう語った。

「また避難所に来るとはね。振り出しに戻ってしまったよ。仮設住宅も室内は泥だらけ。車も水没してしまった」

 腰に持病のある宮腰さんは、再び福祉避難所での暮らしに戻った。

 今後は、仮設住宅に入居する一人暮らしの高齢者を被災後にどう支えるかも検討が必要だ。宮腰さんのように、75歳以上で歩行も困難な要配慮者には、避難時の「移動ケア」も要る。また、避難の長期化には、メンタルケアも重要だ。

 跡見学園女子大学観光コミュニティ学部の鍵屋一教授は、高齢化や複合災害も見越した災害後の「個別支援計画」や避難後の生活再建のケアなども見直していく必要があるという。

「例えば、75歳以上の要配慮者に、自力で家屋の泥出しや修繕など復旧を担ってくださいと言っても、困難なのは目に見えています。『そこはボランティアと、自力でやってください』というのが現行の仕組み。特に受援力が弱い高齢者や障害者に対する公的支援を見直さなければなりません」

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国レベルの支援のあり方の見直しが不可欠