ソニーよりも高給の中国企業の誘いを断ってソニーに入社した楊瀛(ヤン・イン)さん。彼女は「ソニーには外資の良さと日本企業の良さの両方がある」と語る。彼女が感じている「ソニーの魅力」とは何か? 彼女の働き方から解剖する(片山修著『ソニー 最高の働き方』よりの抜粋記事です)。
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上司と本音で話せる飲み会
さて、個を尊重するソニー内部の人間関係はどうなのだろうか。
近年、若手を「飲み会に誘ってもついてこない」という嘆きをしばしば聞く。年齢差のある人間関係の構築には、多くの企業が悩んでいる。「OJT」による人材育成が通用しない時代になったとはいえ、ソニーでも人間関係は希薄になっているのだろうか。必ずしもそうではないようだ。
楊の直属の上司は、システムソリューション事業部長の柳沢英太で、積極的に飲み会を行うタイプだ。不定期ながら、おおよそ月に一度ほどのペースで10人前後の開発メンバーが集まり、居酒屋で飲み会を行っている。柳沢も参加する。
楊は、次のように語る。
「ほかの部署はわかりませんが、柳沢さんのようなマネジメントと業務以外で直接話せる機会は少ないので、飲み会の機会に〝これをやってみたいです〞という話をしたりします。〝それはむずかしいんじゃない? ほかの会社で失敗していたものでしょ?〞なんて返されることもあります」
若手は上司に遠慮なくいいたいことをいい、上司もまた、甘やかさずに返事をする。互いに本音で話ができるからこそ、飲み会が意味ある「場」になる。
楊に「自身の役割や、期待を感じるのではないですか」と尋ねると、「それに関して、疑ったことはないですね」という返事だった。
チームのメンバーや上司に対する、絶対的な信頼が感じられる。その信頼は、自分自身がその期待に応えられるという自負につながり、自信になる。生き生きと楽しんで働く社員が増え、彼らのエンゲージメントも高まる。
「上司は、なんでもすぐ褒めてくれるんですよ」と、うれしそうに語った。
「日本企業の良さ」「外資系企業の良さ」とは何か?
楊は、ソニーを選び続ける背景をこう説明する。
まず、ソニーの良さについて、彼女は「外資系っぽい良さと、日本企業の良さを併せ持っているところ」と、表現した。
「日本企業の良さというのは、新人を育ててくれるところです。〝外資系っぽい〞良さというのは、上下関係が緩いところですね」