崔真淑さん
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 今年、スウェーデン王立科学アカデミーは、AIに関連する研究者に初のノーベル賞を授与すると発表し話題になりました。プリンストン大学のジョン・ホップフィールド博士とトロント大学のジェフリー・ヒントン博士は、現代の強力なAIモデルの基盤となるコンピューターサイエンスの革新で物理学賞を受賞しました。さらに、Alphabetの子会社で人工知能開発を行う、DeepMindのデミス・ハサビス博士とジョン・ジャンパー博士は、タンパク質の構造を解析するためのAIであるアルファフォールドの開発により化学賞を受賞しました。こうした受賞傾向は、AIが科学と社会に与える影響の大きさを示しているでしょう。

生成AIは生産性を高めるというが……  

 特に、ChatGPTの誕生により生成AIは私たちの身近になっています。生成AIは、あらゆる人々の生産性を高めると期待されています。しかし、生成AIの使用については深刻なジェンダーギャップが存在することが発見されたのです。この傾向は、シカゴ大学のアンダース・フムラム教授とコペンハーゲン大学のエミリー・ヴェステルガード教授の研究から明らかになりました。

 教授たちは10万人のデンマーク人を対象にアンケート調査を行い、ChatGPTの使用頻度と、その活用を抑制する壁について検証しました。結果は以下のようなショッキングな格差を浮き彫りにしました。女性は男性に比べて生成AIツールの利用率が16〜20%低いことが明らかになったのです。特に、教師をしている人々において男女のギャップは大きくなる傾向がありました。教授たちは、生成AI活用のための男女別のトレーニングの機会を設けないと、技術革新における男女格差を生み出す可能性があると報告しています。

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生成AIにおけるジェンダーギャップ