「産後8週の産休を取ったあと議会に復帰しました。年度途中で子どもは認可園には預けられず、認可外の保育園へ。パートナーと育児を分担しながら議員としての仕事は続けましたが、駅頭に立ったりする政治活動は体力的にもきつかったですし、子どもを誰に預けるのかという問題もありました」(本目さん)

 翌年の19年3月には3期目を目指す区議選もあった。本目さんは2期の実績も評価されトップ当選したが、知名度拡大が必須な新人候補には選挙戦と育児の両立は厳しいだろうという。

 一方、こうした現状を変えるための取り組みも広がっている。

 昨年10月、子育てしながら地方議員を目指す女性を支援する「こそだて選挙ハック!プロジェクト」が立ち上がった。統一地方選を目指す候補者やボランティアを募集し、選挙制度を学ぶ勉強会や情報交換、選挙戦での戦い方などの助言を通して選挙活動を後押ししてきた。

 発起人のひとり、田村真菜さん(34)は22年の参院選に出馬、「子連れ選挙」を経験した。そのなかで、子どもを背負って演説している写真が選挙後に炎上した。公職選挙法で禁じられる未成年者の選挙運動に当たるのではとの批判からだった。総務省は22年11月、子どもの同行は問題ないとの見解を出したが、それまでは統一解釈がなかったのだ。田村さんは言う。

「制度自体が子ども連れを想定しておらず、母親が挑戦しづらい現状があります。ロールモデルとなる先輩議員も多くありません。そうしたハードルを取り除き、普通の人が政治にチャレンジできる社会になってほしいと思っています」

 ハラスメントも女性の政治進出を阻む壁だ。20年度の内閣府の調査では、女性地方議員の57.6%が議員活動や選挙運動中にハラスメントを受けた経験があるという。男性より25ポイント高い。田村さんは続ける。

「有権者からに限らず、党幹部や同僚議員からのセクハラ・モラハラもよく耳にします。党内での被害は声を上げづらく、ハラスメントを理由に出馬を諦める人もいるでしょう」

■公的なサポートも必要

 田村さんは、統一地方選に出馬予定の女性を対象にした期間限定の「女性議員のハラスメント相談センター」も開設した。似た経験を持つ議員や、弁護士ら専門家と連携して相談にのり、対応策の検討や解決のためのサポートをするという。こうした民間による手弁当の活動に頼るのではなく、公的なサポート体制もあってしかるべきだろう。

 政権政党たる自民党は格差是正に「後ろ向き」とも言われる。今回行われた道府県議会選では、自民党公認候補の女性割合は6%に過ぎなかった。それでも、三浦教授が言うように是正の機運が高まりつつあることは間違いない。政治は世論を無視できない。岩盤を突き破るには、私たち社会の側が声を上げ続けることだ。(編集部・川口穣)

AERA 2023年4月17日号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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