国や企業の仕事と育児の両立支援が充実し、女性の社会進出が進んできたなかで、もっとも遅れているのが政治分野。さまざまな壁が立ちはだかっている。AERA 2023年4月17日号の記事を紹介する。
* * *
「女性は人口の51%を占めるのに、議会では20%弱。これでいいのか」
「議会にもっと女性の声を」
3月31日に告示、4月9日に投開票された神奈川県議会議員選挙に立候補した新人女性は、選挙戦でそう訴えた。
今回の統一地方選に際して行われた41の道府県議会議員選挙には、計489人の女性が立候補した。候補者全体に占める割合は約15.6%。人数・割合ともに過去最高だった。しかし、政府が2020年に閣議決定した「第5次男女共同参画基本計画」では統一地方選、衆参両院選の女性候補者を25年までに35%にするとしており、大きな乖離(かいり)があるのが現状だ。
■得意分野打ち出せない
実際に議員に就いている女性の割合を見ても、衆議院9.9%、参議院25.8%、都道府県議会11.8%、市・特別区・町村議会15.9%にとどまっている(22年末時点)。女性の政治進出の遅れは、日本が抱える喫緊の課題のひとつだ。
あまりにいびつな現状は、代議制民主主義の正当性すら揺るがしかねず、弊害も多い。女性議員が増えれば女性の声をより政策に生かしやすくなることはもちろん、東京都台東区議会議員で、若手女性議員のネットワーク「WOMAN SHIFT」代表の本目さよさん(41)はこんな指摘をする。
「女性議員と男性議員の比率が均等なら、女性の視点を踏まえつつも議員それぞれが得意な政策を打ち出していけるはずです。しかし現状では、女性議員は子育てや福祉など女性が比較的多く取り組む政策課題についてまず声を上げる必要があります。例えば産業振興に取り組みたくても、リソースが割けない女性議員が少なくないでしょう」
格差が是正されれば、女性議員自身もより政策本位で活動できるようになるはずだという。
政治分野における日本の男女間の格差は、世界でも最悪レベルだ。世界経済フォーラム「ジェンダー・ギャップ指数2022」によると、日本の政治分野の男女格差は146カ国中139位。完全な平等を「1」、完全な不平等を「0」としたスコアは0.061と極めて低い。