AERA 2023年4月17日号より
AERA 2023年4月17日号より

■23区で3人の女性区長

 ただし、歩みがまったく進んでいないわけではない。18年に男女の候補者数をできる限り均等にするよう政党や政治団体に求める「候補者男女均等法」が施行され、22年の参院選では国政選挙で初めて女性候補者が3割を超えた。首長は議員以上に女性の比率が低いが、東京23区では今年の統一地方選前の時点で過去最多の3人の女性区長がいる。ジェンダーと政治を専門とする上智大学の三浦まり教授は、現状をこう分析する。

「まだ大きな変化があったとは言えませんが、少なくともこの状況を変えなければならないという社会の機運は確実に高まっています。ただし、二極化も進んでいます。特別区議会では女性議員比率が平均で3割を超え、4割超の区もあるなど都市部ではかなり状況が変わってきた一方で、女性が声を上げづらい風潮が強く、停滞している地域も多くあります」

 女性政治家が増えない要因としてしばしば言及されるのが、「なり手不足」だ。21年の衆院選自民党の女性候補者が9.8%と少なかったことを問われた際、当時の甘利明幹事長は「応募してくださらない限りは選びようがない」と発言した。ただ、三浦教授はこう指摘する。

「『なりたい人がいない』はよく用いられる言い訳です。政治家を志す女性がまだ少ないことは事実でしょうが、それを阻む制度や意識があること、候補者を育成したり見つけ出したりするシステムが十分でないことから目を背けてはいけません」

 これまで、政治を巡る意識も制度も、女性の進出を十分に想定していたとは言い難い。20年に日本財団が18歳から69歳の女性1万人を対象に行った調査では、女性政治家が増えない要因として「議員活動と家庭生活の両立の難しさ」を挙げた人が34.5%(複数回答可)で最も多かった。「『男は外で仕事、女は家事・育児』という性別役割分担意識」を挙げた人も31.4%にのぼる。日本維新の会の馬場伸幸代表(58)は3月28日の会見で女性候補者の擁立について問われ、「私自身も1年365日24時間、寝ているときとお風呂に入っているとき以外、常に選挙を考えて政治活動をしている。それを受け入れて実行できる女性はかなり少ないと思う」と発言したが、性別役割分業を強調する時代錯誤の発言だとして大きな批判を浴びた。

■選挙と育児の両立の壁

 特に育児中の女性にとっては、選挙に挑み、政治活動を続けるハードルは低くない。前出の台東区議・本目さんは18年に第1子、今年第2子を出産した。台東区議会で産休制度が整備されたのは第1子出産の直前だった。台東区に限らず、数年前までは多くの議会で「出産」すら想定されていなかったのだ。

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