これまで「夫婦経営」「家族経営」が一般的だったコンビニ加盟が、ひとりでも可能に! 単身世帯の増加や高齢化、労働力人口の減少を見据えたファミリーマートの「ひとり加盟制度」は、新たな制度として注目を集めている。

 一般的には独立開業にあたり、店舗オーナーがこなすべきタスクは物件探しや事業計画書の作成、商品・サービスの開発、価格の決定、スタッフ募集……と山積み。その意味で、既存のブランド力や商品、ノウハウを活用できるフランチャイズ経営は、有益な手法の一つとなっている。各店舗の安定した運営を促すため、コンビニエンスストアのフランチャイズ契約の多くは「夫婦または2~3親等以内の家族2名による専業」を条件に課してきた。そのためパートナーがいない人はフランチャイズ契約を断念せざるを得なかったり、定職に就くパートナーに加盟店での専業を促したりする必要があった。

 しかし、昨今の家族形態の多様化や未婚率の上昇、労働力人口の減少などを受け、従来の経営モデルは変化しつつある。大手コンビニチェーン・ファミリーマートでは、2023年4月、事実婚や同性パートナーでも全ての契約タイプで加盟申し込みが可能となり、そして2024年6月、さらなる加盟者の拡大のため、パートナーを必要としない「ひとり加盟制度」を新たに開始した。増加する単身世帯に門戸を広げたほか、パートナーに仕事を続けてもらいながら独立を目指すことが可能になった(宮崎県、鹿児島県、沖縄県は対象外)。

 ファミリーマートは、既存の「ストアスタッフ独立支援制度」「インターン社員独立支援制度」という制度でも、ひとりでの独立を支援してきた。これらは一定期間の店舗勤務を必須とし、給与をもらいながら独立を目指す制度だ。契約タイプによっては土地や建物をファミリーマートが用意するが、せっかく条件のよい物件が出てきても、店舗勤務期間中であれば見送りになってしまうことも。一方、「ひとり加盟制度」は店舗勤務も不要で、すぐに加盟することが可能。最短ルートでの開店を支援している。

キャッシュレス決済やセルフレジなど、個人では導入が容易ではないICTもすぐに活用できる

スタッフの募集・育成にかかる費用を助成し、人員不足対策も

 ファミリーマートの「ひとり加盟制度」は、店舗勤務や店舗経営の経験がなくても安心して運営に専念できるよう、開店時フォローやスタッフの募集・育成支援、人員不足時の対策など、様々なサポートが用意されている。

 商品の在庫管理や発注、レジの集計業務、スタッフのシフト管理など、コンビニオーナーの業務は多岐にわたる。その不安を払拭するため、本部の社員による開店前後最大24日間のフォローを実施。わからないことをその場で質問できるだけでなく、スタッフの育成に関するアドバイスを受けられる。

 多くの企業が直面する人手不足にも、手厚いサポートを用意した。スタッフ募集・育成の助成金は3種類。求人媒体(同社指定)掲載費用を最大20万円助成する「スタッフ募集助成金」、スタッフ育成状況に応じて最大30万円を助成し、早期戦力化を図る「スタッフ育成助成金」、同社指定のマッチングサービス利用手数料を最大20万円助成する「スタッフ不足対策助成金」など、金銭面からも経営を支援する。

ファミリーマートではスキマバイトサービス「タイミー」などを活用し、人材獲得に努めている

 人件費以外にも、水道光熱費の高騰、物価の上昇など、店舗経営のコストは年々増大。「ひとり加盟制度」に限らず、店舗運営支援金として年間120万円、24時間営業の店舗には年間144万円、経営助成金を6万~10万円(2FC-N契約店舗のみ、開店から5年間に限る)支払うほか、水道光熱費(年間上限360万円)の 90%、廃棄ロス原価高に応じて10~25%を本部が負担。開店後もバックアップを徹底し、売り上げ拡大をともに目指す。

開店前後のフォロー期間が終わったあとも、スーパーバイザーが店舗へ定期的に訪問。本部と加盟店の橋渡しを担い、目標や戦略を共有する

運用開始後、1カ月余りで加盟が決定

 ファミリーマート リクルーティング・開発本部開発推進部 加盟募集グループマネジャー代行、中田瑞穂氏によると、「ひとり加盟制度」は24年6月の運用開始以来、反響は上々。「7月時点で問い合わせ数は30件以上にのぼり、そのうち1名は早くも加盟が決定しました。パートナーが定職に就いている人からの問い合わせも多く、狙い通りのターゲットに届いていると思います」と手応えは十分のようだ。

 地域の拠点であり、公共サービスの提供などを担うコンビニは、生活に欠かせない社会インフラの一つ。ファミリーマートでは時代の変化にいち早く対応するとともに、地域の貢献に取り組んでいる。「今すぐ独立したい」「共働きを続けたい」といった希望をかなえたい人には、自分らしく安心して活躍できる「フランチャイズオーナー」という選択肢が増えたと言えるだろう。