右上:スターティングブロック(競泳)/フライング検知システム、スタートの合図が同時に聞こえる音声スタートデバイスを搭載。右中:オンスクリーン グラフィックス/スタート前に選手名と国籍、ゴールと同時に上位3名の名前を表示。右下:タッチパッド/選手のタッチで1.5~2.5kgの力が加わると、即座にタイムが計測される。左:. 電子スターティングピストル(陸上)/引き金を引くとスタート音再生、閃光、計時機器作動が同時に行われる

4年に1度の夏、世界が熱狂するアスリートたちの競演。 パリの街をスタジアムに、オリンピックが開催される。 31回目のオフィシャルタイムキーパーを務めるオメガが、今大会でも未体験のスポーツ観戦を演出してくれそうだ。

 1896年にアテネで開催されたことに始まる夏季オリンピックは、戦争による中止を除けば、これまで29回開催されてきた。30回目となるパリ大会で、間もなく聖火が灯る。第1回の100m走で優勝したアメリカのトーマス・バークの記録は12秒0。その後、開催ごとに数字は更新され、2012年のロンドン大会でウサイン・ボルトが9秒63をたたき出した。人類の肉体はオリンピックと共に限界を超えてきたと言っていいだろう。それは同時に、計時技術の革新の歴史でもあった。

 1932年のロサンゼルス大会以来、冬季を含む数々の大会でアスリートたちをサポートしてきたのが他ならぬオメガ。単一の時計ブランドとして初めてのオフィシャルタイムキーパーだったが、この時は30個のストップウォッチの提供に過ぎなかった。しかし、戦争による12年の中断を挟んだ48年の冬季サンモリッツ、夏季ロンドンの両大会でいち早く電子機器を導入する。それまではゴールラインを越える瞬間を目視で判定していたが、0コンマ以下で雌雄を決する勝負では精度に限界がある。そこで光線を横切らせ、最初の選手がラインを越えると計時がストップするフォトセルという機械を開発した。

左:最初は運動会のようなピストルを使っていた。コース位置で 聞こえ方に微妙なズレがあった という。中:1948年に初めて導入されたフォトカメラ。右: 各コースの結果を1枚の画像に集約

時計とカメラが進化の両輪

 時計ブランドという先入観をいい意味で裏切るように、オメガの技術は計時以上に多岐にわたって活用されている。たとえば、フォトセルと同時期に開発されたフォトフィニッシュカメラ。高速カメラは動きの一瞬をとらえるが、こちらは写真判定用にゴールで一定時間内に起きたあらゆることを記録することが出来る。時間をスライスし、選手がゴールラインを越えた瞬間を示す合成写真をつくる画期的なものだった。

 計時技術と画像処理の進化は精度アップの両輪となり、64年のインスブルックでのテレビ中継スタート、68年のメキシコシティーでオメガの電子計時技術が全競技で採用されたことから一気に加速する。100万分の1秒まで計れるクァンタムタイマーがさまざまな競技で使われ、東京2020で毎秒1万枚の画像を記録したフォトフィニッシュカメラは、パリ大会では次世代モデルのスキャン オー ビジョン アルティメイトとなり、4万枚まで撮影可能になるという。

左:競泳も最初はコースごとにタイムキーパーを配していた。 右:1956年のメルボルン大会から導入された「スイム エイト オー マチック」により、僅差でも正確な順位の計測が可能に

 特筆すべきは、テレビやインターネットでの視聴を意識したコンピューター ビジョン テクノロジーのアップデートだろう。たとえば2008年の北京大会以来、競泳のテレビ中継ではスタンダードとなったオンスクリーン グラフィックスは、水面に選手名や出身国を表示するヴァーチャル技術。個々のスイマーを判別しづらい視聴者の観戦をサポートし、会場以上の臨場感を味わわせてくれる。

 来るパリ大会ではさらにAI技術が更新され、飛ぶボールのトラッキング、選手とラインやバーの距離間の計測も可能となる。さらに競技中のみにとどまらず、各選手の詳細な過去データを蓄積し、パフォーマンス予測なども行う。世界的なイベントならでは、観戦者も先端技術の恩恵を受けられるスポーツの祭典となりそうだ。

アスリートという冒険者と共に

左:スターティングブロック(陸上)/ピストルが作動したタイミングと選手の動き(圧力のかかり具合)の誤差でフライングを探知。右:フォトセル/光線を発し、最初の選手が越えると計時がストップ

 オメガは以前から宇宙飛行士、ダイバーをサポートしてきた。4年間にわたって過酷なトレーニングを続け、0コンマ以下の秒単位で雌雄を決するアスリートたちも、限界へ挑む同じ冒険者だ。彼らの晴れの舞台であるオリンピックのタイムキーパーであり続けることは、まさにオメガらしい偉業といえるだろう。 古代ギリシャの都市オリンピアで開かれたスポーツ大会に倣い、平和の祭典として復活させたのは、フランスのクーベルタン男爵だった。彼が生まれ育ったパリで3度目の大会が開かれるこの夏、どんな記録が生まれるのか。オメガが見せてくれる4年単位のイノベーションが、その伴走者となることは間違いない。

 最後にこの2月発売の新作、パリ2024オリンピック エディションについて触れておきたい。シーマスター、スピードマスターというシグネチャーモデルで、どちらもゴールドが印象的にあしらわれているほか、ケースバックにはパリ2024のエンブレムと五輪の意匠が配されている。デザインで華やかさ、機能で技術の革新。腕元のオメガを通じて4年に1度の祭典を楽しんでみたい。

革新を続ける一方、昔から変わらない道具も。最後の1周を告げるラストラップベルは今もハンドメイド。スイスでつくられている
シーマスター ダイバー 300M パリ2024
オメガが誇るコーアクシャル マスター クロノメーターキャリバー8800を搭載。日付表示はパリ2024の数字フォント、秒針にエンブレムをあしらっている。18Kムーンシャイン™ゴールド & ステンレススティール 自動巻き ケース径42mm 137万5000円
スピードマスタークロノスコープ パリ2024
タキメーター、パルスメーター、テレメーターの三つのタイミングスケールはダークグレー。アラビア数字やリーフ型の針など、レトロ感覚のディテールがエレガンスを感じさせる。18Kムーンシャイン™ゴールド 手巻き ケース径43mm 794万2000円