高齢者が転倒骨折を起こすと、寝たきりへと至る悪循環を生み出す可能性が高い。一度転倒骨折すると、その後の正常な歩行を困難にし、再転倒のリスクもきわめて高くなる。また転倒に対する恐怖感が生じると、外出や運動を避けがちになり、さらに筋力が低下し、再転倒を繰り返すリスクがある。
「再び骨折すると、リハビリによる回復も最初の骨折の場合よりも困難となる可能性も高く、そのまま寝たきりで要介護という状態に移行してしまいます」(田辺医師)
わが国における要支援・要介護になる原因は、1位が認知症で18.0%、2位が脳血管疾患(脳卒中)の16.6%、3位が高齢による衰弱の13.3%に次ぎ、骨折・転倒は12.1%と4位だ(厚生労働省「国民生活基礎調査2016年」)。しかしこの事実は意外と認識されていない。
転倒骨折が増えると、医療費だけでなく、介護費用も増加し、社会的にも経済的にも損失が生じる。転倒骨折は、認知症や脳卒中同様、予防に努めるべき重大な問題なのだ。
転倒骨折は骨粗鬆症と転倒の二つが重なることで起こる。高齢者は、高齢化が進むほど骨がもろくなる骨粗鬆症を発症している場合が多い。
(文/伊波達也、杉村 健)
※週刊朝日MOOK「腰痛 肩こり ひざ痛のいい病院」から一部抜粋