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 ゲーム、音楽、映画、エレクトロニクス、半導体、金融の6つの領域で躍進を続けるソニー。躍進を支えるのは、社員と会社が「選び合い、応え合う」関係をつくる「人事制度」にある。

 知られざるソニーの人事制度について、ソニーグループ執行役専務で人事・総務担当の安部(あんべ)和志氏に聞く(片山修著『ソニー 最高の働き方』よりの抜粋記事です)。

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年功序列的要素を一切なくす

 ソニーは2015年、さらに抜本的な人事制度の改革に取り組んだ。「ジョブグレード制度」の導入である。賃金における年功的要素を完全に払拭し、属人的な要素も排除したのだ。

 たとえば、ブラウン管テレビや組み込みソフトのエンジニアは、時代の変化に応じて、自らのスキルを変える必要がある。総人件費を増やすわけにはいかない中で、スキルのシフトは、間接的に雇用を守ることにつながる。要するに、「新しいスキルを身につければ、ソニーの中で新しい仕事にチャレンジできる。そのバランスこそが、ソニーらしい雇用の守り方なんですね」という。

 つまり、年功序列的要素を一切なくし、仕事の役割や重さに応じて賃金を支払う形に切り替えたのだ。

「ジョブグレード制度」には、等級がつけられている。つまり、ヒトではなく、役割に格付けされ、「I(インディビジュアルコントリビューター等級群)」と、「M(マネジメント等級群)」の2つに分けて設定されている。等級が上がるほど、会社での役割が大きくなるなど、そのときどきの役割に応じて、上下左右シームレスに見直しが可能になっている。

『ソニー 最高の働き方』(片山修・著/朝日新聞出版)

「能力ではなく、やっている仕事の価値に対して賃金を支払うということですね。かりに、グレードが下がれば、賃金は下がります。なぜなら、いまのマーケットに照らすとやっている仕事の価値が下がっているからです。下がった価値に対しては、その価値の賃金しか払えません。賃金を上げるには、自分でスキルを上げてくださいということですね」

 当然、評価についても、個人の成長に重きが置かれている。4月に上司と年間個人目標を立て、10月に進捗状況を確認、期末に実績と行動の両面から評価を行う。実績評価は目標に対してできたかどうか、行動評価は「Purpose&Values」に沿った行動ができたかどうかで決まる。「Purpose」と同時に策定された、共通の価値観である「Values」の中身は、「夢と好奇心」「多様性」「高潔さと誠実さ」「持続可能性」だ。

 報酬は、毎月のベース給と、年2回の業績給に分かれている。ベース給は、ジョブグレードに応じた一定のレンジから決定され、毎年の実績と行動を合わせた総合評価によって改定される。また業績給は、毎年の会社業績と個人の成果によって決定される。

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