これに対して、日本企業の多くが採用してきた「メンバーシップ型雇用」は、役割ではなく、ヒトに仕事をつけてきた。正社員として雇用した従業員を定年まで雇用し続ける「終身雇用」や、年齢によって賃金を上げる「年功序列」に親和性がある。新型コロナ禍のリモートワーク導入で、「ジョブ型雇用」への関心が高まっているが、日本企業が「ジョブ型雇用」に移行するのは簡単ではない。

 ヒトに仕事をつける日本の会社は、職務の線引きがむずかしく、評価の規準をヒトから役割へ移行するのは困難だし、そもそも、長年、終身雇用と年功序列に慣れ親しんだ社員の混乱を招きかねないのだ。

 その点、「ジョブ型雇用」は、仕事にヒトをつける働き方だから、職務を特定し、個人と会社が雇用契約を結ぶ必要がある。契約にあたっては、必要な知見や技術、経験などについて、両者の合意が欠かせない。勤務時間、勤務地などの勤務条件についても同様である。

頻繁に実施される「1対1面談」

「会社と個人の合意には、対話が不可欠だと思います」と前置きして、安部は次のように言葉を継ぐ。

「労働流動性が高い米国では、対話がもっとも重要な要素と認識されており、対話だけで会社と個人の関係を構築するノーレイティング(評価で社員をランクづけしない人事制度)の動きすら出てきています」

 対話の前提となるのは、互いの理解と信頼、尊重である。つまり、共感しながら話を進めることが重要だ。

 その意味で、ソニーではよく「1対1面談」が実施される。面談で話すテーマは、日々の悩みごとや取り組みたいこと、将来のキャリアなどだ。ポイントは、対話によって社員の成長を促すことである。

「ソニーは、挑戦心のある社員が多くていいですね、といわれることがありますが、もちろん、そういう人ばかりではありません。対話をするということは、社員に自分にとって成長とは何かを考えてもらうことです。“1年後はどうなりたいの?”という対話が、社員の成長につながる。確かに、ソニーには挑戦的な社員が比較的多いと思います。社員には成長に対する強い思いもあります」

「社員意識調査」結果を役員ボーナスに反映

 ソニーは11年以降、グループ全社員を対象にした「社員意識調査」を秋と春の年2回実施し、指標をモニタリングしている。よく耳にする「従業員満足度調査」とは異なる。

「従業員満足度調査」が会社の居心地の良さをモニタリングするのに対して、ソニーの「社員意識調査」は、マネジメントへのフィードバック質問が含まれているのが特徴だ。結果は、即時にマネジメントに戻され、経営に反映される。

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