ソニーが成長を求める限り、人事もつねに変わり続ける必要がある。安部は、気を引き締める。

「多くの試練を経てきましたが、ソニーの文化を守りながらいまに至っています。未来永劫、盤石というわけにはいかないでしょう。ただ、これからもソニーが成長し続けるには、やはり個を大切にするという文化を守りながら、新しい方向に向けて何をすべきかを考え続けなければいけない。さらに難易度の高いチャレンジになると思います」

 そして、2人の創業者に敬愛の念を表するのだ。

「私は、井深さん、盛田さんに直接接した最後の世代です。お2人の言葉を通して、ソニーの企業文化の価値をより高め、そしてヒトという財産を継承していかなければならないと思っています。40年やってきて、人事の深さとやりがい、むずかしさをあらためて感じていますね」

 それを象徴するのが、18年の「経営方針説明会」の席上、当時社長の吉田憲一郎が、いきなりバックスクリーンに井深と盛田の肖像を大きく映し出したことだ。創立75年以上が経過したいまでさえ、2人の言葉は、ソニーで働くすべての人たちにとって成長のよりどころになっている。歴代の経営者は、創業者の言葉に情緒的に盲従するというよりも、ストラテジックに本質を継承すべきととらえている。それは、成長という執念にも似た思いを持ち続けるソニーならではのユニークさだ。そして、どん底から復活し、再び成長ステージに立つことができたソニーの強みでもあるのだ。

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