「中央集権」を変える画期的システム
戦後の日本を牽引した中央集権システム。だが時代は変わった。いまやそれは地域社会のイノベーションをさえぎる足かせだ。脱・中央集権なくして日本の未来はない。
もちろん政府もそんなことは百も承知だ。自治体みずからが決め、実行し、問題解決をはかる――。そうした分権型社会への転換を実現すべく、試行錯誤を繰り返している。政府が地方分権改革を掲げ、具体的な政策を練りはじめたのは遡(さかのぼ)ること実に30年前(※5)。
※5 1993年、衆参両院で地方分権推進が決議された。
そこから今日にいたるまでこまめな法改正を経ながら段階的に、政府から自治体へ権限の移譲がなされてきた。しかしまだまだ不十分だ。分権型社会にはほど遠い。政府と自治体それぞれの思惑に隔たりがあり、いまだ綱引き状態である。
一方、分権型社会を実現するうえで、かねてから議論されているのが「道州制」の導入だ。現状の「都道府県」の行政区画を廃止し、より広域な「道・州」に再編しようという構想である。ひとつひとつの自治体(道州)の担う統治領域が拡大すれば、政府による権限移譲も大規模かつスムーズに果たされる。となると、日本全体の底力は格段に増すだろう。
菅元首相の本当の狙い
しかしその道州制構想もそれはそれで実現の道のりは険しい。ようするに日本のかたちを根本的に変えようというものだ。変化を嫌う日本人にはなかなか受け入れがたい。事実、これまで少なからぬ自治体の首長たちが反対を表明してきた。その言い分はさまざまだが、いずれにしろ現存47都道府県の利害調整は容易ではないだろう。
部分的な権限移譲を繰り返したところで埒が明かない。かといって道州制実現のハードルは高い。しかし今後、日本の人口は一気に減少していく。国のことは国がやり、地方のことは地方でやる。そんな地方行政の自立と効率化は待ったなしだ。
おそらく菅元首相は地方分権改革の停滞に強い危機感を持ったのではないか。そこで現実的な次の一手を打った。起爆剤になりうる一手だ。それがふるさと納税である。