8月、チャコット代官山スタジオのスペシャルワークショップで。「教えたいことは全部言う。それを頭の片隅に置いて、自分で見直してほしい。自分で考えられる力があるほうが後に助けになるはず」(高田)(写真/植田真紗美)

海苔巻きをおやつに食べ 夜遅くまでバレエの練習

 高田を21歳頃から知る友人で、牧阿佐美バレヱ団、元プリンシパルの伊藤友季子(41)は、高田を「無限の可能性を秘めたダンサー」と評する。

「日本人は感情を抑える国民性もあってか、表現することが苦手だと思う人も多いなか、茜ちゃんは、確かな基礎、テクニックの上に表現力もある。ダンサーによっては、『この人はこの役に向いている』とイメージを固定されることもありますが、どんな色にも染まることができる人。悲劇のヒロインの役もハッピーな役も、クラシックもコンテンポラリーも、何でも踊りこなして自分のものにできる」

 学生の頃から高田に憧れ、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団で活躍する杉浦優妃(25)もこう話す。

「回転するときも止まっているときも、体幹がぶれない。速いステップも正確にこなす。床を押す力が強いから、片足立ちもきれい。何より役作りが丁寧で、それが踊りからも伝わってきます」

 高田のバレエは技術面もさることながら、その表現力が高く評価されてきた。ロイヤル・バレエ団を選んだ理由も、その表現力に憧れたからだ。高田が実在した人物を演じる際は、役の時代背景を調べ、周囲の人々との関係性や幼少期の育ち方にまで考えを巡らせる。

「コンクールなどで1人で踊るときは、周りにだれがいるのか、どんな場面なのか想像しながら踊っていました。バレエ団の舞台では、周りで踊っている人の表現を受けて、私の表現も変わる。楽しみが増えています」

 高田がバレエを知ったのは3歳の頃。ロシアのバレエ団が来日公演をするというテレビCMを見て衝撃を受けた。

「今でも、CMの映像は脳裏に浮かびます。母親に2カ月ほど、毎日のようにしつこくバレエを習いたいと頼んだそうです。しつこく言ったのは、覚えていませんけど(笑)」

伊藤友季子が総監督をつとめる「Dance the Dream」の特別ワークショップで講師として指導。全国から子どもたちが参加した。ワークショップ後にはサイン会も。「どんな言葉で教えたら良いか、いつも悩みます」(高田)(写真/植田真紗美)

 母に連れられ、バレエ教室に行くと、すぐにバレエに夢中になった。小学生になると、オーディションを受けたり、コンクールに出場したりするようになる。この頃から高田の存在はバレエ界の中で話題になっていた。ただ、元来シャイな性格。オーディションでは審査員から見えにくい後方で踊り、バレエ教室の先生に「審査員の前に出て踊るように」と注意を受けたこともあった。

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