音楽が流れると自然と体が動く。ヒップホップ、タップダンスも好きで、社交ダンスにも興味がある(写真/植田真紗美)
この記事の写真をすべて見る

 英国ロイヤル・バレエ団 プリンシパル、高田茜。3歳の頃、テレビCMで流れたバレエの映像に一瞬で心奪われた。バレエを学ぶため、自分の道を自分の手で切り開いてきた。2008年に憧れていた英国ロイヤル・バレエ団に入団すると、16年には最高位のプリンシパルに。高田茜のバレエ人生は、常にけがとの闘いでもある。落ち込むこともあるが、それも表現になると信じ、理想の踊りを追求する。

【写真】高田茜さんの写真をもっと見る

*  *  *

 ジリジリと太陽が照り続けた8月初旬、東京・代官山のバレエ用品店「チャコット」のレッスンスタジオでは和やかで、熱いクラシックバレエのレッスンが開講されていた。

「みんな移動するときの足裏のコントロール、とても良いですよ」

「足をずっと軸足に置いておかないで」 

 柔らかい声色で教えているのは、英国ロイヤル・バレエ団、プリンシパルの高田茜(たかだあかね・34)。バレエ団のオフシーズンに合わせ、ロンドンから日本に一時帰国していた。その間に開かれたスペシャルレッスンで、高田は生徒一人一人に声をかけ、手や足の位置を修正、腹や腰に手を当て体幹の位置を確認していく。みるみる生徒の踊りが良くなるが、何より見本で踊る高田の姿に圧倒された。しなやかにのばされた手足は指先まで神経が行き届き、音楽に合わせて弾むようにステップを踏む。身長161センチと、バレエダンサーとしては小柄だが、踊ると実際よりも大きく見える。

 高田が所属する英国ロイヤル・バレエ団は、フランスのパリ・オペラ座、ロシアのマリインスキー・バレエ団とともに世界3大バレエ団と称される。「ロミオとジュリエット」や美少女マノンを取り巻く愛憎劇「マノン」など、物語性の高い演目が得意。多くのバレエ団で公演されている「白鳥の湖」や「くるみ割り人形」も、マイムや小芝居が随所に織り込まれ、演劇性の高い演出を行う。

 2008年、ロイヤル・バレエ団に研修生として入団、16年に最高位であるプリンシパルに昇格した。高田の公演がソールドアウトすることも珍しくない。

次のページ
海苔巻きをおやつに食べ 夜遅くまでバレエの練習