外国人選手に心強い兼任コーチに
立浪監督が現役最後の2年間に打撃コーチを兼任し、DeNA・三浦大輔監督も現役最終年は投手コーチを兼任した。日本ハムの稲葉篤紀2軍監督、巨人の高橋由伸元監督、ロッテの福浦和也1軍ヘッド兼打撃コーチも現役時代にコーチ兼任でプレーしている。外国人選手が兼任コーチのケースは珍しいが、前出の中日OBはメリットを強調する。
「日本人指導者が外国人選手にアドバイスを送るのは神経を使うんですよ。通訳を通して伝えたいことのニュアンスが変わると、打撃のバランスが崩れる危険性があります。ビシエドは日本で長くプレーしてきたので、コーチが伝えたい意図が分かりますし、日本でプレーする外国人選手の感覚も理解できる。技術面だけでなく精神的なケアもできるし、外国人選手には心強い存在になるでしょう」
兼任コーチではなかったが、ビシエドの大きな支えとなった指導者が、アロンゾ・パウエル氏だった。現役時代は中日で6年間プレーし、94年から3年連続首位打者を獲得。真面目な性格で野球に対してストイックな一方、チームメートと積極的にコミュニケーションを取り、チームの輪にすぐに溶け込んでいた。97年限りで退団すると、98年は阪神でプレーした。現役引退後はメジャーの下部組織でコーチを務め、20年に中日の巡回打撃コーチに就任。翌21年のシーズン途中から1軍打撃コーチに配置転換され、同年オフに退団した。
「外国人の専任コーチは珍しかったですが、選手の打撃を熱心に見つめ、気になる点があれば意見交換をしていました。特にビシエドは広角にライナー性の打球を飛ばす打撃スタイルで共通していたので、パウエルのアドバイスがスッと頭に入ってきたと思います。パウエルがコーチ時代に取材したのですが、『選手が納得しないまま打ち方を変えると良さが消えてしまう。自分のやり方が必ずしも正しいわけではないですし、最終的に決めるのは選手なので、参考にしてもらえれば十分です』と語っていたのが印象的でした。ビシエドもパウエルと同じように、日本で得た経験を指導者として還元してほしい」(当時中日を取材したスポーツ紙記者)