古賀茂明氏
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 9月27日、自民党の総裁に石破茂元幹事長が選出された。ほっと胸を撫で下ろした方も多いだろう。

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 このコラムが配信される10月1日には臨時国会での首相指名を受け、その日のうちに組閣、石破新内閣発足となる予定だ。その後、国会では、4日に新首相の所信表明演説、7日と8日に衆参の予算委員会、9日に衆議院を解散、15日告示、27日投票とすることを表明した。

 驚きの展開だが、いずれにしても来週には、所信表明と衆参両院の本会議で各党の代表質問が行われることになる。石破氏はそれらの場で今後の政策について方針を述べることになるが、選挙を前にどこまで具体的に表明するか、また選挙戦を通じてさらに目玉になるような政策を出すのかが注目される。

 報道では見えないが、永田町が総裁選に集中している間、霞が関ではこの日に向けた準備が進められてきた。新首相や各省庁の秘書官人事、就任直後の記者会見の想定問答などは全て総裁選前に主要候補ごとのバリエーションも含めて整えていたはずだ。

 各省庁の幹部官僚にとって、新大臣に、予定した秘書官人事を承認させ、就任記者会見で想定問答通りに発言させることが、最初の重要な仕事となる。さらには、国会の代表質問や選挙戦における大臣発言の管理という重要課題もある。

 とりわけ、2025年度予算及び24年度の補正予算や今臨時国会や来年の通常国会に提出する法案、さらには、重要な政策の基本に関わる計画の策定などについて、可能な限り具体的に自分たちのやりたいことをそのまま大臣に発言させることが必要だ。

 そうしておけば、後で大臣がそれらの重要事項について問題があると気づき、それを見直そうとしても、自らの発言を撤回して国会や世論に批判される状況に陥るので、官僚の方が優位に立てるという計算である。

 逆に、新首相や新大臣たちが、これまでの政策を止めたり、修正したりしたい場合には、最初の1週間程度の間にそれを宣言するか、少なくとも、その問題について最初に質問された時に、事後に現行の方針を覆したり、修正したりしても問題にされないような抽象的な受け答えをしておく必要がある。

 そのためには、一刻も早く、現行のどの政策を見直すのかを見極めることが重要だ。

 もちろん、全てを変えることはできないから重点を定めなければならない。

 そうした観点で見た時、私が心配している問題がある。最初の1週間で、官僚に騙されて石破首相が後戻りできなくなる心配がある案件があるからだ。それは、今後の世界の中での日本の立ち位置を決めると言っても過言ではない、生成AIと先端半導体に関する政策である。

 具体的に解説しよう。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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